後ろから「ひーーら、ひーーら、ひーーら」というミミイさんの声が聞こえます。
風もないのに僕のスカートがヒラヒラして、中身がチラチラ見えています。
思わず悲鳴をあげてスカートを押さえてしまいましたが、男の僕がはいているスカートの中なんて、誰も興味がないでしょうね。
考えてみたら本当の僕は、今日はズボンをはいています。
この純白のパンツは、ミミイさんの魔法で作られた真っ赤な偽物です。
「ふっ、笑止!! そんなガキのはくようなパンツに興味なーーし!! 同じ手などくらうものかーー!!」
さすがは司令官です。
旅団長とは違うようです。
走るスピードに衰えはありません。
「むっきーーですのぉ!!」
あーっ、僕の後ろでミミイさんが怒っています。
嫌な予感しかしません。
「ふん、スケスケになったのか。だが、それがどうした。どうせ顔を隠しているのだからブスなのだろう。そんな奴のスケスケパンツに興味なーーし!」
さすがは司令官です。じゃなくて、なんですかこれはー!!
パンツの中身がスケスケです。
「ミッ、ミミイさーーん!! やめて下さーーい!! なんですかこれはーー!! 黒いモジャモジャがあるじゃないですかーー!! 僕にはモジャモジャはありませーーん!!」
「おおーーとっ!! キュートルピンクの口から爆弾発言だーー!! なんと、パンツの中には何も生えていないようだーー!!!!」
いいえ、正確には1本生えています。
男のあれが。
でも、僕のあれはとても小さいです。ほとんど体から出ていません。女神エイルフの加護を受けたときに縮みました。
きっと、女神にみさおを捧よという意味と、とらえています。
だから、僕は恋も知りません。うふ、女神様に焼き餅を焼かせてはいけませんからね。僕の全ては女神様のものなのです。
その代わり、強大な強さをもらっています。感謝をしています。
「ふんっ、毛がなくなったのか。だが、全く興味なーーし!! さっさと隠してくれ。臭そうなだけだ!!!!」
なっ、なんだとーーっ!!
「むきーーっ!!!! ですのおぉーーーー!!!!」
さすがに僕もムッとしました。
ミミイさん、次の一手を御願いします。驚くような一手を!!
「うおおおおおおおおおぉぉーーーーーーーーっっっっ!!!!!」
すごい驚きの歓声が上がりました。
でも、おっさんばかりなので、汚いうなり声のような歓声です。
司令官が思わず立ち止まっています。
――えーっ!
ミミイさんは一体どんな魔法を使ったのでしょうか。
「とっ、尊い…………」
司令官がつぶやきました。
テレビカメラと、動画配信者のカメラが全部こっちを向きました。
シーーンと、この場が静まりました。
――えーっ!
いったい何があったのでしょう。
「見るなーー!!!!!!」
「見ないでーーデェース!!」
すごい勢いでキュートルスリーとデェスが走って来ます。
「あっ!!」
バキッ、ボキッと司令官の体から音が聞こえました。
キュートルスリーの蹴りと、デェスの蹴りが綺麗に決まっています。
これは、骨折間違い無しですね。
――まっ、まさか!!
僕は、恐る恐る……
……下をみました。
パンツが消えてなくなっているのか??
――ほっ!!
と、思ったら消えていません。
スケスケですがはいています。
皆さんご安心ください。はいています。
「かみさまーー!! そっちじゃありませーーん!! 顔が出ていまーーす!!!!」
ユウキが大きな声で言いました。
「なーーんだ、顔ですか。それなら大丈夫です。バッチリメイクをしていますからね。元の顔などわからないと思います」
「おおーーとっ!! キュートルピンクの顔がさらされてしまいました。八手三朗もびっくりな展開です。なんと地球防衛義勇戦隊キュートルプリンセスデェスの1話から顔バレだーー。しかし、美しい。美しすぎます。そしてご覧くださいパンツ丸出しでーーす!!!!」
「ぎゃーーっ!!」
僕は思わずスカートを押さえました。
顔が熱くなるのがわかります。
真っ赤な偽物なのに、すごくはずかしいです。
「おおーーとっ!! 閲覧数がものすごいことになっています。億をとっくに超えましたーー!! 世界中の人に見てもらえているようでーーす。配信者みょうりにつきまーーす!!」
「えーーっ!!!! 世界中に僕の姿が見られているのですか。どうせならブルーを見て欲しいですね。ブルーのほうが絶対僕より可愛いのに。でもミミイさん顔出しはNGですからね」
テレビカメラと、動画配信者のカメラが全部一斉にキュートルブルーの方を向きました。
「あのー、皆さん」
キュートルブルーのユウキが、カメラが向いた瞬間に話しかけました。
声も可愛いですね。さすがはユウキです。
「は、はい……」
八州テレビのレポーターが代表して返事をしました。
僕は、そのすきにぐったりしている、司令官のえりをつかんでポイッと王国軍の中に投げ入れました。
「私達は、都内にいる方に逃げてもらう時間稼ぎに来ました。本当はテロリスト指定を受けた旧仲信作長官の配下なので、そんなことをするギリもないのですが、長官がどうしてもと言われますのでこうして戦いました。皆さんこれは、現実です。直ちに命を守る行動を取ってください。私達キュートルプリンセスデェスは、困っている人は助けたいのですが微力です。自分達の身はご自身で護ってください」
ユウキの声は最後、涙声になっています。
この声が皆さんの心に届くといいですね。
「王国軍の皆さん、司令官が気づいたらお伝えください。僕達は、本当は飛びかかる火の粉を振り払う戦いしかしたくありません。でも、不本意ながら、大勢の人の命を守るためなら、こうして出向いて戦う事もあります。これは、意思表示の為に行なった為の戦いでもあります。そういうことなので今回は、命を奪わず手加減をしました。次戦うときは、地獄送りです。そう、司令官にお伝えください」
今度は僕が王国軍に向って言いました。
カメラが一斉に僕の方に向きを変えました。
「ふ、ふざけるなーー!! 不意打ちばかりじゃねーか!!」
「そうだ!! そうだーー!!」
王国軍の中から声がしました。
「ふっ、じゃあ、あなた達なら司令官に不意打ちで勝てるのですか?」
「なっ……!?」
兵士達が静まりました。
司令官はかなりの実力者のようですね。助かりました。
「日本国の政府の皆さん、地球防衛義勇軍はテロリストではありません。政府と敵対する気もありませんが、先程も言いましたが飛びかかる火の粉は断固として振り払います。貴重な戦力を私達には向けない方がいいことをここにお伝えいたします。八州テレビ以外のテレビ局の皆さん、偏向放送はやめて早く国民の皆さんに真実をお伝えください。いいえ、ここにいる方は違うのですね。早く真実を放送できるといいですね。では」
僕は深々とお辞儀をしてゆっくり、ゆっくり顔を上げました。
そして、可愛く見えるように一瞬だけ笑顔を作りました。
そのあとに、くるりと反転して茂みに向って歩き出します。
その時に、ミミイさんが顔をおおうマスクを再びしてくれました。