授業の方は順調に終わった。
楽しい放課後である。
とはいえ、昨日は難波ダンジョンで潜って15階まで行ったので、今日はお休みだ。
難波ダンジョンと言っても、階層構造は一緒だし、売店のお姉さんやロビーの女悪魔さんも一緒なので、違いは回りから聞こえてくる会話が大阪弁なだけであった。
マリアさんとみのりのダブルバードで挑んだが、まあ、声が綺麗だったな。
みのりがマリアさんに
魔銃はみのりに持たせる事になった。
【射撃】が生えそうなのが
弓より拳銃の方が楽そうだったからだ。
マリアさんが拳銃の撃ち方とかをみのりに教えていた。
【お止まりなさいの歌】で時間停止してオークをバンバン撃っていたが、MPの消費量が半端ないので補助ぐらいに戻った。
さて、俺とみのりと東海林で廊下を歩いている。
「今日はマリアさんとスタジオなのか」
「そうなんだ、レッスンしてアルバムスタッフと顔見せだって」
「アルバムは日本で作るのかい?」
「そうみたいしばらく日本にいるって、ホテルメトロポリタンに泊まってるよ」
「高いホテルに、まあ世界の歌姫だからなあ」
「川崎はエネルギッシュで気に入ったって」
気に入ってくれたら嬉しいな。
とはいえ、『ホワッツマイケル』の連中も退魔装備受け取りの関係でしばらく日本だろう。
再戦は無いだろうが、ちょっかい出されると嫌だな。
泥舟が廊下を歩いてきて合流した。
「タカシは今日はどうするの?」
「どうしようかな、わりと暇だな」
「新宮は暇なのか、丁度よかった」
廊下ですれ違った先生が足を止めて、俺に声をかけてきた。
「なんですか?」
「いやな、先生方の有志で迷宮に潜る事にしたのだが、相談に乗ってくれるとありがたい、何しろ危険な場所だからな」
「先生方もDチューバーデビューですか」
「迷宮に入りたいという生徒が増えてきたしな、教員も体験して色々知っておかないといけないと、文部省からの通達も来ているんだ」
社会が激変しているから先生も大変だな。
「いいわね、手伝ってあげましょうよ、タカシくん」
「そうだな、先生にはお世話になってるし」
「いやいや、新宮が大変な事になってる時に気がつけてやれなくてな、悪かったと思っているんだよ」
それは先生のせいじゃ無いからなあ。
「気にする事はありませんよ」
「ありがとう、そう言ってくれると助かる」
「人数は何人ですか?」
「三人だな」
「じゃあ、俺と泥舟と東海林で手伝うか」
「そうだね、一日で零から一レベルかな」
「ああ、私も歌で応援したい」
「みのりはスタジオに行け、そっちも大事だろ」
「わかった~~」
後で職員室に行く事にして、先生とは別れた。
みのりを送って校門まで行く。
鏡子ねえさんとマリアさんが白いベンツの前で待っていた。
「よお、お前らっ」
『こんにちは……』
『今日はよろしくおねがいしまーす』
『堅くならなくて大丈夫よ……』
「それじゃ、行ってくるねっ」
「頑張ってこいよ」
「うんっ!」
みのりはねえさんとマリアさんと一緒に車に乗って去って行った。
俺と泥舟と東海林は校庭を校舎に向けて引き返していく。
「東海林は迷宮は?」
「三連休に潜っていたよ」
「そうか、調子はどうだい?」
「なかなか良い感じだ、霧積も大人しくなったし、樹里の動きが良くなって警報入れてくれるので楽になったな」
「高田君はどう?」
「なんだか、レア投げ斧が超上手くなってね、なかなか凄いよ。前衛で中衛は便利だ」
そうか、投げ斧で最初牽制して、接近してきたら霧積と共に前衛か。
なかなか良いバランスだな。
レア券は藍田さんのホーリーシンボルに交換したって聞いた。
ハイヒールが三回使えるらしいから安心だね。
「同接数も結構増えてきて、みんな『Dリンクス』のお陰だよ、ありがとう」
「よせやい、東海林たちが頑張ったからだろ、礼には及ばないよ」
職員室に着いた。
中に入って探すと、宮川先生のところに二人の先生がいた。
「おお、来た来た、新宮」
「おじゃまします」
職員室はいつ来ても居心地が悪いな。
うちのクラスの担任の宮川先生と、英語の竹宮先生、理科の望月先生だな。
「今日はよろしくね」
竹宮先生が微笑んで言った。
美人で人気がある先生なんだよな。
「新宮くん、活躍はいつもDチューブで見ているよ、京都の戦いも凄かったね」
望月先生は眼鏡のインテリって感じの若い先生だ。
「宮川先生が前衛で、竹宮先生と望月先生が後衛かな、先生方、なにか武道とかは?」
「やってないなあ、学生時代は少し柔道をやっていた」
「私もテニスぐらいね」
「僕もあまり」
まあ、先生方だからね。
「先生方はどんな
東海林の質問がとんだ。
「そうだなあ、私は剣士かな」
「先生は僧侶をやりたいわ、治療魔法が使えると学校でも便利そう」
「僕は、やっぱり魔法使いかな」
まあ、順当な感じかな。
俺は収納袋から換金し忘れた装備を出して並べた。
片手剣と、バックラーと、みのりの使っている弓、あと魔銃を出した。
「お、おおっ」
「鉄砲だ、これレアな奴じゃないの?」
「初心者は
あとは、胸当てと、陣笠が一個あるな。
とりあえず、最初だから、俺の防具を貸しても良いしね。
「宮川先生は戦士系だから、売店で装備を揃えても良いんですが、竹宮先生と望月先生は
「そ、そうか~」
宮川先生が、片手剣、バックラー、胸当て。
竹宮先生が、胸当て、泥舟の脚絆、弓。
望月先生が、陣笠、ガントレット、魔銃、という事になった。
さあ、迷宮に行こう。