クラスに入るといつものようにみのりがデデデと走り寄ってきた。
「大変だよタカシくん、チアキちゃんが可愛いよ」
「そうかそうか」
「おねえちゃんも、ママも、パパもデレデレで溺愛だよ、将来が心配だよ。魔性の幼女だよ」
そうかそうか、峰屋家に受け入れられたか。
たぶん可愛がられている間、チアキはチベット砂狐みたいな渋い顔だったんだろうなあ。
目に浮かぶようだ。
「『Dリンクス』新人入ったんでしょう、幼女の『
「イケメン悪魔さんに託されたんでしょ、新宮くんっ」
「一緒にお風呂に入って、可愛い服を着せたら、もう大変よっ、萌え萌えよ、萌え萌え」
「良いなあ、可愛い妹私もほしー」
というか、お前らどけ、毎朝道を塞ぐな。
「おはよう新宮」
「おう、東海林、今日の事『オーバーザレインボー』のメンバーにも伝えたかい?」
「ああ、みんな乗り気だった、鏡子さんも強いし、タカシも凄いからな。峰屋さんの歌も助かるし」
「ほほほ、
「ああ、今日も期待してるぞ、みのり」
「うっ」
今日はセンチネルセンチピードの大群と戦うのを思いだしたらしく、みのりの表情が歪んだ。
俺は自分の席に座る。
みのりは前の奴の席に座った。
東海林が椅子をもってくる。
「【
「呪文屋に売ってないかな」
「階層三のコモン
「レア
「宝箱から出れば良いのだが」
「二十階のフロアボスで運試しね」
「うちはあまり運が良くないからなあ」
「十階で装備金箱出したのにか」
「あれはたまたまさあ、鏡子さんに折られたし」
まあ、あれは運が良かったのか悪かったのか。
霧積のレア酔いが治ったという点では良かったかもしれないな。
あのまま深い階に突っ込んで行ったら、たぶん人死にが出ていただろう。
「おい、タカシ~、昨日のイケメン紹介しろや~~」
「あたいら子宮にズキュンと来ちまってさあ~~」
「あれは悪魔だぞ、深い階に行けば出るよ」
不良の姫川と高木が寄ってきた。
あいかわらず馬鹿だなあ、こいつら。
「あんだとー、こらっ、だったら連れてこいや~~」
「世界一の男を倒したんだろ、楽勝だろ~~」
ゴゴン! と鈍い音がして姫川と高木がしゃがみ込んだ。
「タカシに絡むなって言ってんだろっ、おめえらっ」
「す、すいやせんっ、後醍醐先輩っ!」
「か、絡んでねえっすよ、雑談してただけっすっ」
「世界一のマイケルを倒したタカシは、世界一のE級配信冒険者なんだからな、もっと敬え、おらっ」
後醍醐先輩が姫川と高木を蹴散らした。
「わりーな、タカシ、あいつら馬鹿でよ」
「いえ、助かりましたよ」
「チアキちゃん入って良かったな、後は魔術師だなあ」
「そうですね、それで大体パーティの形が整うんですけど」
「泥舟が魔法使いになって、僧侶が入れば完璧だけどなあ、まあ、そうもいかねえか」
「槍がもったい無いのが難ですね、後醍醐先輩」
「東海林もそう思うか。パーティの編成って難しいよなあ」
後ろのドアががらりと開いてチヨリ先輩がやってきた。
「みなさま『おはようおはようおはようございます~~♪ すてきな朝、青い空、白い雲に今日の元気をはじけさせましょ~~♪』」
おはようの歌好きだなチヨリ先輩。
「チアキちゃんもうちの事務所に入れなさいよ、子役の仕事沢山あるわよ」
「そういうのは本人に聞いてからですね」
多分チベット砂狐な顔で嫌がる気がする。
「んもう、みのりさんと一緒にPVに出たら盛りあがるのに。というか『Dリンクス』のPV作るべきだわっ」
「俺は音楽はちょっと」
「残念ね、イケメンなのに」
まあ、Dチューバーになってからの魅力加算イケメンだからなあ。
元々美少年だった泥舟とは違うぞ。
「先輩、おはようございます」
「あらっ、後輩のみのりさん、おはようですわ~~、おほほっ」
「チエリ、お前先輩風ふかしてっと抜かされるぞ」
「うう、なんかみのりさんが入って来ただけで、人気ごぼう抜きで怖いのよ」
「そうですかっ、やったーっ!」
「まだ、シングルも出して無いのに、CMの引き合いが凄いって社長がこぼしてましたわ、まあ、マリアさんと一緒のオファーですけれども」
それはまあ、そうだろうな。
マリアさんは世界的なシンガーだし。
やっぱり世界ツアーとかみのりも行くのかな。
なかなか、冒険とアイドルの両立は大変そうだな。
「タカシくーん、一緒にCMに出ようよう~~」
「いやだ、面倒臭い」
「くそう、俺にもCM回ってこねえかなっ」
「後醍醐は整髪料のCMとか来そうね」
「そうかー、やっぱりなあ」
後醍醐先輩は自慢のリーゼントに櫛を入れた。
「おーう、みんな席につけ~、後醍醐も北村も自分のクラスに帰れ~」
お、先生がやってきた。
「へーい」
「はーい」
「あと、新宮、後でちょっと話がある、ホームルーム後に来てくれ」
「はい」
なんだろう?