二十四階の安全地帯には誰も居なかった。
小休止を取る。
「二十三階、混んでたねえ」
「川崎大師の初詣かと思ったよう」
そこまでは混んでいないだろう、みのりよ。
JR川崎の駅前ぐらいかな。
「キングトードを積極的に狩ってカエル玉を備蓄しよう」
「そうだね、ねえさん」
俺は収納袋に手を入れて、スネークスティレットを出して腰に差した。
最短距離をマップソフトで検索して歩いて行く。
ストーンゴーレムが二回出た。
くつしたがゴーレムを転ばせてくれるので、あとは急所をねえさんが打ち抜く楽な狩りであった。
ドロップ品はダストアイテム石の玉、
【堅くなれの歌】は聞いた者全員の装甲が上がる。
狩りに使うと安全だが時間が掛かってしまうので、みのりはまだ覚えていない。
レア物だと対象指定が出来て便利なんだが。
残念ながら僧侶の奇跡【
キングトードも二回出た。
スネークスティレットで瞬殺であった。
カエル玉が出て、手持ちは三個だ。
深い所に行くまでに沢山備蓄しておくと良さそうだね。
キングボアが現れた。
大ヘビだね。
ナメクジバットでたたき殺す。
ドロップに蛇皮ボディスーツが出て、鏡子ねえさんが喜んでいた。
スネークスティレットももう一本ゲット、二倍の速さでトード類を狩れるぞ。
下り階段を下りて、オバケ階だ。
「ひいいっ、助けてくつしたちゃん」
みのりがくつしたに抱きついた。
女の子は苦手な物が多いなあ。
視界いっぱいの墓石の迷宮である。
チアキを先頭にそろそろと進む。
出てくるのは、スケルトン、ゾンビ、ゴーストなので、わりとサクサクである。
みのりがエンドレスで【オバケ嫌いの歌】を歌っているからね。
アンデッドたちは出た瞬間に苦しみ、何も出来なくなる。
いやいやラクチンであるな。
「この階ネームド出るのか?」
「女子リッチ『アンナニーナ』だね」
「リッチ女子か、上流階級の娘かな」
語順が違うだけで、ずいぶん違った物になるな。
「ネームドレアから【従魔創造の珠】が出るんじゃないか?」
「そうかもしれない」
ゾンビとスケルトンを倒しながら俺達は先に進む。
チアキがムカデ鞭でスケルトンの胸から魔石をぶっこぬくという攻略をやっていた。
上手いなあ。
いつの間にか、チアキはムカデ鞭を自由自在に使えるようになっていた。
二十五階はあまり苦戦らしい苦戦はしなかった。
最短距離を歩いて下への階段へと到達した。
ゾンビのドロップ品は、お線香、
「ゾンビーパウダーとはなんだ?」
「史実だと、振りかけると死者がゾンビになる粉だけど」
『シャワーの後に振りかけるとスッとするクーリングパウダーじゃ』
「「「「あ~~~」」」」
『この前使ったけど、中身はタイのスネークブランドっぽい』
『これからの季節にぴったり』
ドロップ係の人、遊んでるなあ。
ともあれ、【
「みのり、覚えるか?」
「おぼえるおぼえる」
みのりがスクロールを広げてスペルを覚えた。
「みのりねえちゃん、ムカデ鞭に掛けてみて」
「わかったよー『太古の業火よ、かの武器にその現し身を宿さん、ファイヤーエンチャント』」
みのりが呪文を唱えると、チアキのもったムカデ鞭が燃え上がった。
「おー、これ、鞭は焦げない?」
『魔法の炎なので、武器には影響はないわい』
チアキが火の付いた鞭をヒュンヒュン振った。
明るくて綺麗だが、危ない。
ちょうどゴーストが寄ってきたので、チアキは火炎鞭でピシリと攻撃した。
鞭が当たるとゴーストにダメージが入ったようだ。
「うん、いいね、だけど面倒くさい」
チアキと泥舟が魔導銃を乱射して、四匹のゴーストを落とした。
飛んでいる奴は鉄砲が便利だよな。
矢にも掛けられるようだから、『
エンチャントの火はしばらくしたら消えた。
マップを見ながらどんどんと進む。
わりとオバケ階は楽だな。
二十階を過ぎると、階ごとに敵の性格がかわって、例えば二十一階、二十二階のトロールとオークだと、防御力があって、火力が高いパーティが有利だ。
トロールが戦闘中に回復するので、どうしても長丁場になるんだな。
で、二十三階のワンコ階は、逆に敏捷性勝負になる。
沢山のワンコとオルトロスを正確に捉えないと二十三階あたりは厳しい。
遠距離の
そしてオバケ階になると、『
階ごとに有利になる
迷宮探検は奥深いね。
下り階段を下りて、二十六階である。
ここもオバケ階、景色はもやが掛かった一面の墓地だ。
「こわい~~」
みのりが涙目になっている。
慣れろ。