第一ホールを抜けて通路である。
通路には魔物は出ないようだ。
第二ホールを偵察する。
空が七色にきらめいていた。
「七色蝶がいっぱいだな」
「なんか、見ているとクラクラして来るんですが」
「直視するな、七色蝶の光には幻惑作用がある」
「狙撃できないよ」
「幻惑だけ? だったら駆け抜けたらどうかな?」
「地面にはキャタピラーがいっぱいだ、あいつらが羽化して七色蝶になると言われている」
「くつしたを暴れこませて火を吐かそう」
どうしたもんかな。
『二ホールは下だけ見て進む手もある』
『重装甲だとわりと使えるけど、『Dリンクス』は軽装甲機動戦型だからなあ』
『あと、七色蝶は光だけじゃなくて、鱗粉にも幻覚作用がある』
『なんと厄介な蝶なのか』
泥舟が胸のホルダーから特殊弾を取って銃に詰めた。
「狙えないぞ」
「狙わない、スライム魔石散弾」
ああ、その手があったか。
泥舟は膝を付いて長銃を構えた。
ズキューン!!
バタバタと七色蝶が落ちてきた。
泥舟は再びスライム散弾を詰める。
ズキューン!!
散弾だから直視して狙わなくても良い。
『範囲魔法があれば楽なんじゃがのう』
『わりとどこでも範囲魔法があると楽だよ』
『んだんだ。滅多に出ないから範囲魔法だよ』
空に舞っていた七色蝶は大分数を減らした。
鉄砲があって良かったな。
「七色蝶が近寄って来たら、見ないようにして攻撃」
「わおんわおんっ」
くつしたが張り切っているが、お前も幻惑されると思うぞ。
みのりが俺にくっついてきた。
なんだよ、と思ったが目を閉じてリュートを弾き始めた。
「目を閉じて、【冷静の歌】を歌うから手を引いてください」
「それはナイスアイデア」
俺はみのりを抱き上げて、くつしたの上に乗せた。
「ちがうんだっ、たかしくんはわかって無い」
「たかし兄ちゃんはわかってないっ」
「くつした、チアキとみのりを頼んだぞ」
「わおーん」
手を引いていたら、俺が戦えないからな。
「もうっ、『ああ~~あ~~、あたまをすっきりおんどをさげろ~~♪ れいせいにれいせいになれ~~♪ クールになれ~~♪』」
俺は近寄って来た七色蝶を直視した。
よし、【冷静の歌】が掛かっていれば幻惑もすぐ解けるな。
『暁』で斬り飛ばす。
「キャタピラーも結構多いな」
鏡子ねえさんがキャタピラーを粉砕しながらそう言った。
ダキュンダキュンダキュン!
チアキがばんばん七色蝶を落としていく。
空に七色蝶、地にキャタピラーである。
鱗粉も掛かってくるが、即座に【冷静の歌】で幻覚が解ける。
『
チアキとみのりを乗せて、くつしたが時に火を吐いて進む。
『【冷静の歌】は使えるなあ』
『聞こえている範囲全部に僧侶の【
『しかもエンドレス、便利便利』
『セイレーンの群生地でも使えるね』
『ああ、誘いの岬か、難所だけど行けそう』
『これまでは、耳栓が定番だったけどね』
迷宮の罠は厄介だけど、色々と解法があって面白くもあるな。
第二ホールは無計画に突撃すると、幻惑され幻覚を見せられて壊滅する事もある。
意外に難所なんだ。
鏡子ねえさんがキャタピラーを蹴り出して、第二ホールを抜けた。
魔力霧が追いかけてきて、俺達の胸に吸収された。
魔石とドロップ品がゴロゴロ落ちていたが、取りに戻るのもなあ。
と思ったら、くつしたが走り回り、チアキがムカデ鞭で回収して廻った。
ある程度は回収したな。
「蝶のブローチに、芋羊羹、バタフライナイフ、が出た」
『蝶のブローチは幻覚を和らげる効果があるな』
『【冷静の歌】があればイラネ』
まあ、収納袋に突っ込んで置こう。
さあ、次のホールを抜ければ下り階段だ。
第三ホールも、飛行虫敵と地上虫敵の組み合わせだ。
空からはドラゴンフライ
入り口近くで、泥舟がドラゴンフライGを狙撃して数を減らす。
音に反応して、巨大ヘラクレスカブトムシと巨大ギラファクワガタが寄ってきた。
「きゃりありあるうううぅぅっ!!」
鏡子ねえさんが
俺も踏み込んで甲虫の頭を狙い、『暁』で切り殺して行く。
甲虫たちは大きいのでキャタピラーほどの数はいない。
倒しながら、魔力霧を吸い込み、魔石とドロップ品を拾いながら進む。
近づいてくるドラゴンフライGは、泥舟とチアキが打ち落としてくれる。
ヘラクレスカブトムシ兜とか、ギラファ胴丸とか、甲虫からは防具が出やすいみたいだな。
とにかく、鏡子ねえさんは堅い敵と相性が良い、『金時の籠手』の表権能[楔]でだいたい片が付く。
『『暁』も切れるなあ、ここら辺までくると、一般の刀剣だと甲虫の装甲を抜くのが一苦労なんだよね』
『なんら不安材料が無い』
『ここを抜ければ、二十九階だ、もうすぐもうすぐ』
どんどん倒して、どんどん拾って、俺達は下り階段のある安全地帯にたどり着いた。
「『ああ~~あ~~、あたまをすっきりおんどをさげろ~~♪ れいせいにれいせいになれ~~♪ クールになれ~~♪』」
みのりの歌で、ねえさんの
「ふうっ、戦った戦った」
適当に拾った物を収納袋に詰めていく。
大量大量。
「お、ギラファクワガタセットコンプリートか?」
「グリーブが無いね」
「戻ってクワガタやっつけるか」
「いや、まあ要らないんじゃないかな」
甲虫甲冑シリーズは軽くて堅くて優秀なんだが、装備できるのが、俺とねえさんだけだからな。
俺はヘラクレスオオカブトグリーブ、ヘラクレスオオカブト胸宛てを付けた。
兜は重いのでパス。
あとで売ってしまおう。