「大きな鉄の船だ、ブレスで沈めるか!」
「いや、油が入っていたら大災害だ、駄目だ」
「そうか、つまらんな……」
中身が基地だったら良いが、偽装のために半分でも重油が入っていたら大変だからな。
あと、何を積んでるか解らないし。
核兵器とかはさすがに積んで無いと思いたいが……。
ロシア人は雑だからな。
レグルスは激しく羽ばたいてロケットシーフを追いかける。
前足でつかもうとするとするりと逃げる。
【絶対回避】がやっかいだな。
【絶対命中】でも無いと当てられないだろう。
タンカーがどんどん大きくなっていく。
下から黒スーツの外人が機関銃を乱射してきた。
『GAOOOOOOOO!!』
レグルスが【威圧】が籠もった咆哮を放つ。
ばたばたと外人達が倒れていく。
「命中弾は?」
「一カ所、だが、鱗で跳ね返したわいっ」
「咆哮を
「動いている目標にはかからんっ」
便利技能も色々と制約があるな。
シーフはタンカーの甲板に着地して、みのりを抱えたまま船内に飛び込んだ。
シャッターが閉まっていく。
いかん。
と、思ったが、レグルスが体当たりをして爪でシャッターを切り裂いた。
さすがはドラゴン、頼りになる。
レグルスは着地した。
シャッターの向こうは通路になっていて暗い。
みのりと
俺はレグルスの上から飛び降りた。
「地上戦だな」
「注意して進もう」
俺は【気配察知】を放った。
とりあえず、近くの気配は無い。
くそう、
俺は『暁』を握り、『彩雲』を構えて歩き出した。
大きな気配が背後に現れた。
振り返ると、サッチャンがカメラを構えて着地する所であった。
「あんたか」
「カメラピクシー役なんでおかまいなくう♡」
俺はコメントチェッカーを開いて、『サッチャンチャンネル』に変更した。
『おお、ロシア人のタンカー基地!』
『赤ガチャピンの空中戦すごかった』
『タカシの盾違うな』
『爆発装甲の『彩雲』だ、[自動防御]の『浦波』じゃないから怖いな』
とりあえず、情報が貰えるかもしれないからコメントチェッカーは着けておこう。
「いくぞ、タカシ」
「ああ、レグルス」
俺たちは通路を歩き始めた。
「さあ、敵基地内に侵入です、蛇がでるか鬼がでるか、たのしみですねえ♡」
階段があって、慎重に下りたが敵の迎撃はなかった。
鉄砲で乱射されると思ったが、敵は出てこない。
誘い込みかな?
俺とレグルスの足音だけが白い塗装の船内通路に響く。
『情報出た。ロシア船籍のタンカー『ナホトカⅡ』だ』
『なんでロシアタンカーを東京湾に入れたんだ、海上保安庁なにをしてやがる』
『貨物船で届け出されてるっぽい』
『海上保安庁、臨検に出動しているよ』
『停船するわきゃあないぞ、浦賀水道で海上封鎖だ、横須賀から護衛艦が出動した』
『米軍も動いた!』
よし、事態はちゃんと動いているな。
とりあえず、こっちはこっちで、みのりを取り返す。
通路は扉で塞がれていた。
水密ドアではなく、普通の金属ドアだな。
俺が取っ手を引くと、ギイイと重い音を立てて開いた。
カッと奥からライトが浴びせられた。
とっさにドアの影に身を隠す。
「やあ、いらっしゃイ、タカシくんっ、来てくれて嬉しいデース。みのり嬢を捕まえて、君を呼ぶつもりでしたが、手間が省けましたデス」
奥には甲冑を着込んだミハエルがいた。
手には大きな両手剣、そして大きなタワーシールドを持っている。
完全装備だな。
「ドラゴンさんもいらっしゃいデース。竜の魔石もいただけるとはハラショーでーす」
「簡単にワシを倒せると思うなよ、『
「あなた方はもう終わりデース。誘い込まれたのでーす。私たちはタカシくんとミノリさんを連れて本国に戻りマース」
「りっちょんはどうするつもりだ、みのりと交換するつもりか!」
ミハエルはさもおかしそうに笑い出した。
「リツコよりもミノリさんの方が性能がイイネ。呪歌も沢山おぼえている、レア呪歌を持つ、レア技能もある。そしてネ、何よりも、あの異常なドロップ運、リツコと交換するにはもったいないヨ」
「仲間じゃ無いのか」
「知らないネー、利用できるから使っていただけネ。ただ、心が不安定すぎて、使いにくいネ。ミノリの方が素直で良いヨ」
『そりゃ、りっちょんより、みのりんだよな』
『りっちょん頭がおかしいし』
『スキル【豪運】は魅力だ』
ミハエルはこちらを見てニタリと笑った。
『武器を捨てナサーイ。みのりを殺しますヨー。『暁』をよこすのデース』
ミハエルの背後の巨大ディスプレイに額に銃を突きつけられた、みのりの映像が映った。
「みのり!!」
『タカシくん!! 応じちゃだめっ!!』
『黙れっ、命乞いスルネ!!』
銃が振り上げられ、みのりの頭に振り下ろされた。
くそ!! どうしたら……。