くつしたに乗ったチアキが残った『グランドオーダー』を制圧した。
強いよなあ、チアキ。
とりあえず、僕も結束バンドを使って『グランドオーダー』を拘束していった。
シーフさんが大人しく結束バンドを受け入れた。
他のメンバーは毒に苦しんでいたり、失神したりしていた。
琴平は壁に突っ込んでいたので、くつしたに紐を掛けて引っ張りだした。
死んではいないようだね。
「毒は大丈夫?」
「痛くて動けないけど、死ぬには一日掛かる弱い毒だよ」
ムカデの毒って怖いなあ。
くつしたが寄ってきて僕の顔をベロベロと舐めた。
なんだよ、君は怒って無いのか。
僕は彼の首筋をモフモフした。
うわ、柔らかくてふわふわだなあ。
パトカーがサイレンを鳴らして何台も廃工場の敷地に入って来た。
「チアキさん、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ、石橋さん、『グランドオーダー』はみんな倒したから」
「ご協力に感謝しますっ」
石橋さんという婦警さんは敬礼をして、警官隊が『グランドオーダー』を捕まえて連行するのを指揮していた。
ダダダダダと鏡子さんが走り込んできた。
「チアキ大丈夫か、! お前か、『グランドオーダー』!」
「あわ、あわわ」
鏡子さんはいきなりジャンプして兄ちゃんに回し蹴りを入れてきた。
くつしたがとびあがって、回し蹴りを受けてくれた。
「鏡子、この人は助けてくれた、リュウジのお兄さん、だよ」
「そ、そうだったのか、ごめんごめん、くつしたもごめんな」
「ばうんばうん」
鏡子は慌て者過ぎると、くつしたが説教してるみたいに見える。
「ああ、でも、俺も『グランドオーダー』ではあるから罪は償わないと」
「なんか、追放されて首にされてたから大丈夫じゃない? Dスマホで録音もしといたよ」
「リュウジ、お前、抜け目ないなあ」
「リュウジは何?」
鏡子さんがチアキに聞いた。
「私の友だち」
「おーおー」
なんだか照れくさいね。
石橋さんのパトカーで川崎署まで行って詳しい事情聴取となった。
兄ちゃんが減刑されればいいのだけれど、あとシーフの人も。
琴平は、まあ、出来るだけ重い刑を食らって欲しいね。
川崎署で微細に調書を取られた。
Dスマホの録音も石橋さんに渡した。
「お兄さんは大丈夫だと思うわよ、起訴猶予付きそう、シーフ君も早めで出て来れそう」
「琴平とか、ロリコンとかはどうですか?」
「未成年略取誘拐の限界まで求刑してあげるわ、心配しないでね」
そうか、しばらく琴平の顔を見なくてすみそうだね。
「あんにゃろうは、迷宮に連れ込んで息の根を止めようぜー」
「無茶言うなよ、鏡子」
「『Dリンクス』を奴隷にとか、舐めてんのかって」
「鏡子さん、迷宮の外では法律が優先されますからねっ」
「ぐぬぬ」
それでも、まあ、兄ちゃんは法律の結論が出るまでは留置所で臭い飯のようだ。
「明日なんか差し入れもってくるよ」
「たのむよ、リュウジ」
「うん」
何を持って来て良いのかな。
ポテチーとかは大丈夫なのかな。
警察署の外に出たら、もう夕暮れだった。
『Dリンクス』のタカシさん、泥舟さん、みのりさん、朱雀さんが前で待っていた。
わあ、勢揃いだなあ。
「リュウジ、これからみんなで晩ご飯なんだけど、一緒に来ない?」
「いや、家に帰るよ、お母さんとお父さんが心配してるだろうし」
「そうだね……、じゃあ、また学校で」
「うん、また学校でね」
僕は『Dリンクス』と別れて家路に付いた。
途中で電話が掛かってきて、川崎署に行く両親と合流して、兄ちゃんの面会に行った。
母さんも父さんも泣いていた。
兄ちゃんも泣いて謝っていた。
聴取は進み、琴平はリュウイチ兄ちゃんに全ての罪を被せようとして、失敗して、取調員の心証を悪くした。
他の『グランドオーダー』たちも罪をなすりつけ合って、少しでも罪を軽くしようとしていた。
兄ちゃんの聴取は三日で終わり、起訴猶予が付いて監獄から出て来た。
帰って来た兄ちゃんを囲んですき焼きパーティをした。
兄ちゃんは『グランドオーダー』から抜けて、アイドルの護衛の仕事を始めた。
上司がやさしい『透明ゴリラのヒデオ』さんなので、毎日楽しく迷宮に潜っている。
学校ではチアキと仲良くやっている。
「早く中学生になって、迷宮に冒険に行こうよ」
「いきましょういきましょう」
「そうよそうよ」
「リュウジ君は頭が良いから『
「もちゃ子は何をやるんだよ」
「『
もちゃ子の分際で生意気な。
「前衛が少ないパーティだね」
みんなで笑った。
ああ、早く中学生になって、チアキと一緒に迷宮で冒険したいね。
(チアキの小学生生活 了)