これは、「ニライカナイから神様(ミルク神)が訪れると
お祭りなのに雨が降っちゃったときに、「
沖縄の言葉に「
クイツバさまは、ぼくがいた世界では、お墓を
こちらの世界では、お墓が
でも、どちらの世界のお墓にも、雨は等しく降るんだね。
ポツポツと降り始めた雨の中で、ぼくはクイツバさまのお墓を見ながら、そんなことを思っていた。
今日はお祭りの日だから、これは恵みの雨だ。
「リッカ、ずいぶん長く立ったままだけど、だいじょうぶ? めまいはしない?」
「だいじょうぶ。最近は体の調子がいいんだ」
体が弱いリッカにぃにぃを心配して、母上が声をかけている。
リッカにぃにぃは、ぼくと手をつないで神事が済むまで立ったままだったから、貧血を起こしていないか気になったらしい。
でも、リッカにぃにぃはニッコリ笑って、平気だと伝えた。
「それならいいのだけど。雨にぬれてカゼをひかないうちに、早くお城に帰りなさい」
「えっ? 今からナナミといっしょにお祭りを見に行くから、まだ帰らないよ」
「ダメよ。
「咳なんて、最近は出てないよ」
リッカにぃにぃが言うとおり、ぼくはにぃにぃが咳をしてるのなんて見たことがない。
にぃにぃが小さいころから体が弱いというのは聞いたけれど、いっしょにいてもそんなに病弱な感じはしなかった。
「でも、魔術の練習中にたおれて運ばれたと聞いたわ。心配だからお城に帰ってちょうだい」
「あ、あれは病気じゃなくて、
母上が言っているのは、リッカにぃにぃが2回目の魔力切れになったときのことだね。
1回目はムイがコッソリ運んだし、3回目からはぼくが移動の
「気絶も危険よ。たおれたときに石で頭を打ったりしたら無事では済まないわ」
「ナナミが支えてくれたから頭は打ってないよ」
次々に心配しつづける母上。
リッカにぃにぃは少しウンザリしているみたいだ。
「とにかく、お城に帰って休んでちょうだい。あんまり心配させないで」
「……母上は、いつもオレばっかり……」
母上は、リッカにぃにぃを早く帰らせたいらしい。
リッカにぃにぃはスネちゃったのか、母上にくるりと背を向けて、ぼくにだきついた。
ぼくには、にぃにぃが何をするつもりか分かる。
大きいにぃにぃたちも気づいたけど、間に合わなかった。
「
ボソッと小声で、リッカにぃにぃは魔術を使った。
他の家族を置き去りに、ぼくだけを連れて、リッカにぃにぃはどこかへ移動した。
「ごめんな、ナナミ」
星の海で、リッカにぃにぃはぼくにだきついたまま言う。
なんであやまるんだろう?
キョトンしたぼくに、リッカにぃにぃは自分の気持ちを話してくれた。
「オレは『ナナミといっしょに行く』って言ったのに、どうして母上はオレの心配しかしてくれないんだろう。ナナミもいるんだから、ナナミの心配もするべきだろう?」
ぼくは前にリッカにぃにぃが話してくれた、もうひとりのぼくが母上に育ててもらえなかったことを思い出した。
もしもさっきあそこにいたのがもうひとりのぼくなら、自分のことは心配してくれないのかって悲しくなるのかもしれない。
でも、ぼくはママに育てられた子で、ひとりっ子だからママはぼくがひとりじめだった。
だから、さっきの母上とリッカにぃにぃのやりとりを見ても、悲しいとは思わない。
リッカにぃにぃが体が弱くて病気ばかりする子だったことも知っている。
「きっとぼくは体がじょうぶだから、心配しなくてもいいって思ってるんだよ」
リッカにぃにぃをだきしめて、ぼくは言った。
にぃにぃには、自分を責めてほしくない。
「母上がぼくをキライなワケじゃないから、気にしないで」
ぼくはさびしくない。
だって、にぃにぃがいっしょにいてくれるからね。
ぼくは、母上がほぐのことを心配してくれなくても、それを不平等だとは思わない。