今日は身体測定の日。
3組はあともう少しかぁ。
小学校から欠かさず牛乳を飲んでいる。
そう、欠かさずだ。
満を持して今年も身長計に乗る。
どうだ。今年こそ、170はあるだろ、どうだ。
これで僕も高身長のなかまい、
「165.6cmねぇー。はい次ー。」
よっしゃー!0.3cmのびた。
うん、わかっていた。わかっていたさ。
0.3なんてかわらんだろぉーーー!!!
なぜに神は165cmしか伸びないようにし給おうたのか。
ま、期待はしていない。どうせチビのままだ。
うん、わかっているさ。うん。
「平岡ー!!何cmだったのー??」
うわっ!びっくりした。
今年一びっくりした。
なんだ黒ギャルか。
えっ、また黒ギャルに話しかけられた!?
ど、どういうこと!?
体操服だ!いい香りがする。
いかんいかん。何を思っているんだ僕は。
「ねー聞いてるー?何cmー?」
「165。」
「うん!大丈夫さ!」
大丈夫さ!グー!じゃないんだよ。
「あたしの身長聞きたいー?」
なぜにだぁーー!!僕よりも高いだろー!!
絶対170はあるだろ!
ま、でも、一応聞いとくか。
「な、何cm?」
「172cm!!去年より2cm高くなったのー!!」
「お、おう、それはよかったね。」
嫌味なのか、それはぁーーー!
なんでだぁ。なぜ僕は高くならないんだ!!
「体重も聞きたいー?」
「聞きたい。」
あ、やばい、つい即答してしまった。
絶対キモい奴だと思われた。
「えーっとねー、教えなーい!!」
なんじゃそれ〜。
即答して恥ずかしいーーーー!!
なんで絡んでくるんだこの黒ギャルは〜。
あ、体操服のところに名前が。
えーっと、入野?入野さんか。
初めて知った彼女の苗字。
名前、なんて言うんだろ。心のどこかでそう思っている自分がいた。
身体測定が終わり、お昼休みへ。
僕は昨日と同じ花壇のあるベンチへ行った。
黒ギャル、いや、入野さん、もういるじゃないか!?
てかなんでいるんだー!?
「あー!やっぱり来たね、平岡君!」
「今日も一緒に食べよー!」
「あ、うん。」
ベンチの隅っこにちょこんと座った。
「なんでそんなに遠いのー?もっとこっち来なよー」
「あ、うん、じゃぁ。」
もう少しだけ寄った。すると、
「もー。おいしょっと!」
隣に来た。近い。近すぎるよ!?
いい香りがする。昨日はあんまり緊張しすぎてわからなかったけど。
「今日もお弁当おいしそーだね!ちょっとちょーだいよー!」
「うん、まぁ、いいよ。」
ウインナーと卵焼きを取っていった。
ウインナーも取るのかー!?
「はい、代わりにあたしの焼きそばパン、一口あげるー!」
「あ、ありがと。」
また食べてしまった焼きそばパン。
彼女の食べかけの焼きそばパン。
変なこと考えるな。パンを食べただけ。そう、パンを食べただけなのである。
「入野さん。」
「なにー?」
「その、クラスの友達とかと食べないの?僕より仲いい人いっぱいいるんじゃないの?」
僕は聞いてしまった。昨日から気にはなっていた。
なんでこんなあまり関わりのない僕と一緒にご飯を食べているのかと。
「んー。なんて言えばいいかなー。」
「クラスの友達も一緒にいて楽しいしよく遊んだりもするけど。」
「今この時間、平岡君といると安心っていうのかな、のほほんとできるんだよねー。」
「語彙力皆無でw」
ど、どういう意味なんだろ。
もちろん友達としてってことだよね。
でも、
「僕みたいな陰キャと一緒にいると周りから変な目で見られるというか。僕、無口だし。」
「んー。そんなことないと思うよ。陰キャとか口数少ないとか、関係ない。」
「今、あたしは平岡君と一緒にお昼ご飯食べてる、この瞬間が好き。」
「平岡君は、いや?」
「い、嫌じゃない!!今まで学校の人と喋ったことなかったから。なんというか。とても嬉しかった、です。」
「にひひ!じゃーいいじゃん!今日からあたしと平岡君はもう友達ね!!」
「それにご飯交換し合った仲だしね!」
と、友達。
僕には程遠い言葉。
あ、あれ、なんで、溢れてくる。
なんだ?この溢れてくるものは。
止まれ、恥ずかしい、、、止まれよ!!
「遠慮しなくていいよ。あたしの前では枯れるまで泣きな。」
「ご、ごめん、ごめんなさい、、、ありがと。」
入野さんは何も言わずそばにいてくれた。