「さてさて〜、戦利品……っと」
「クズイ! 大丈夫!?」
僕がチンピラたちから金目のものを漁っていると、念の為に遠くで待機させていたヒメカが走ってやってきた。
「やぁ、ヒメカ。見ての通り、僕は元気さ」
「それなら良かった……っつ!」
ヒメカはチンピラたちの見るに無惨な姿を見て、口元を手で覆う。おや? ちょっと刺激が強かったかな?
「って! アンタ、その背中……!」
そう言いながら、ヒメカは僕の背中を指さす。そういえばさっき、チンピラAくんの攻撃で服が破けたんだった。こりゃうっかり。
「まぁ、一回死んだからね。傷はもう治ってるし。こうしてお金が手に入るなら、ちょっと死ぬくらい安いものだよ」
「『ちょっと死ぬくらい』って、アンタ……」
「それより見てよ、ヒメカ。このチンピラくんたち、なかなかにいいもの持ってる。こりゃ質屋に入れたら、いい金額になりそうだよ」
僕は笑顔でそう振り返る。ヒメカもきっと一緒になって喜んでくれるだろう。
……と、一瞬思ったりもしました。
でも実際のヒメカは、何か言いたそうに僕を見ては、諦めたようにため息をつく。何故だろう?
まぁ、いいや。ちょっと寂しいけど、価値観は人それぞれだからね。僕は強制したりしないよ。
とりあえず僕は現金と金目のものを一通り漁ったあと、一応チンピラくんたちの死体に手を合わせる。君たちの死は無駄にしない、このお金は僕が有意義に使わせてもらうよ。
「……それじゃあ、そろそろここを離れようか。君も来るでしょ?」
「わ、私……!?」
僕は黒髪セミロングのセーラー服メガネっ娘の彼女に、手を差し出す。
「ここにいたら危ないからね。それに騒ぎを聞きつけて、他の
それに彼女には、約束の報酬をいただかないといけない。
「さっ、分かったら早く行くよ」
「は、はい……」
僕の手を取った彼女を連れ、僕らはその場を離れた。
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「……ここらまで来れば、大丈夫でしょ」
僕らはあの場所からだいぶ離れたところで、追ってなどがいないか確認する。
「はぁ、はぁ……助けてくださり、ありがとうございます……」
「感謝なら、ヒメカに言いなよ。僕はお金のために君を助けただけだから」
「ちょっと! クズイ!」
実際、彼女を助けたがっていたのはヒメカだ。
僕は本当にお金のために助けたから、感謝されてもなぁ……。
「ゴメンね。コイツ、デリカシーとかそういうの一切持ってないから。アタシはヒメカ、こっちはクズイ。アナタは?」
「わ、私はツバキ。ツバキと言います。この度は助けていただき、ありがとうございます。ヒメカさん、クズイさん」
彼女の名前は、ツバキと言うらしい。なんかぽいと言えば、ぽい名前だな。
「べ、別に……アタシと同じくらいの女の子を見捨てるとか、胸くそ悪いっていうか……寝覚めが悪いって言うか……」
「僕は別に、どっちでもよかったけどね」
「クズイ!」
正直な感想を述べたら、ヒメカに殴られた。なるほど、これが所謂『暴力系ヒロイン』ってやつか。あいた。
「クズイがクズなのは仕方ないとして……アナタ大丈夫? どこか怪我とか……」
「だ、大丈夫です! 心配してくださり、ありがとうございます!」
「そ、それなら別にいいんだけど……」
ヒメカはそう言いながら、自身の髪を指でクルクルといじりだす。不自然なヒメカの挙動に、僕は色々と察する。あぁ、なるほどね。
「そ、それで……? アタシたち、歳も近そうだし、と、とも……モニョモニョ……」
「こういうのはさっくり言った方がいいよ、ヒメカ。ツバキさん、だっけ? よかったらヒメカと、友達になってあげてよ」
「ななな、何を言って……!?」
そう言うヒメカは慌てて僕の胸ぐらを掴み、そのまま勢いよく前後に揺らす。僕はただ、ヒメカの気持ちを代弁をしてあげただけなのに。
ヒメカは『
『
男はヒメカのフェロモンの
だから僕やテツローみたいな
そんな友達のいないヒメカのために、僕は一肌脱いだというわけ。なんて優しい友人なんだ、僕は。
「そそそ、それに! ツバキさんだって、困っ……」
「いえ! 私はヒメカさんさえ良ければ、お友達になりたい……です……」
「ふぇあぇっ……!?」
友達耐性がなさすぎて、上手く人語を話せていない。やれやれ、手のかかる友人だ。
ここは手馴れている僕が、手本を見せてあげようじゃないか。
「改めて、僕はクズイ。よろしくね、ツバキさん」
特にお金面で。
「ヒ、ヒメカよ……よろしくね、ツっ、ツバキ……」
「はい、よろしくお願いします。クズイさん、ヒメカさん」
僕らはそれぞれ握手をする。
こうしてヒメカは、僕の知る限り初めての女友達をゲットしたのだった。
ちなみに僕の友人は今のところヒメカとテツロー、ツバキさんの四人だけど、ヒメカみたいに友達に飢えてないからモーマンタイだ。