城間ようこ
現代ファンタジー都市ファンタジー
2025年04月16日
公開日
1.1万字
連載中
八百万の神の国、日本。その日本の神々が、ある日突然東京の山をひとつ使って遊郭にしてしまった。
神々は遊郭に移り住むようにと種々様々な日本人の夢枕に立ち、店主として遊技として男衆としてスカウトし、それをなぜか信じた人のみが遊郭へ赴いて見世はぽつぽつ生まれ始めた。
その遊郭、駆天郷の誕生は日本人の度肝を抜いたし、世間は大変な騒動にもなった。だが出来てしまったものは現実にあるのだから、なかった事には出来ない。
駆天郷は神々の作った桃源郷だという流れになって発展を続けた。受け入れた人々は、それは大いに沸いた。
その遊郭である駆天郷には格付けされた様々な見世があるが、その中でも異彩を放つ見世があった。体や芸は売らずに、甘いひと時や安らぎのひと時──「まやかしの心」を売るという男妓が集められた見世、永華院。
その見世に「まやかしでもいい、夢が見たい」と渇望して行った豪道翔二が、綺凛という美しい男童の男妓と出逢う。そして彼の敵娼になり、癒される事を覚える。
翔二の渇望──彼の心には常に、理想の男性として憧れる実の兄、登一の姿があったが、しかし憧れにさえも罪の意識がまとわりついていた。
綺凛はその話を翔二本人から聞いて、「憧れる事は悪い事ではない、夢を持つという事だから」と肯定してくれたのだ。
ありのままの自分を受け入れてくれる綺凛の優しさに触れた翔二は、甘く安らかな時間を味わい、次第に綺凛へとのめり込む。「金で売り買いする、まやかしの心しか渡せないのに」と淀む綺凛もまた、翔二の熱意に溺れてゆく。
二人はやがて、互いの立場を知りながらも、売り買いには出来ようもない、本物の恋愛関係を求め合うようになる。
だが、まだ男性の体を知らない男童である綺凛は、それでも男妓ゆえに水揚げを済ませなければ、見世で一人前として働いてはゆけない。そこで店主の遣り手に、水揚げの旦那候補を勧められてしまう。
それを利用しようと考えた翔二が「綺凛を水揚げする旦那になる」と名乗りを上げる事で、一線を越えようとしてしまうが……。