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立ち入り禁止の旧校舎
立ち入り禁止の旧校舎
鳳亭風流
ホラー都市伝説
2025年04月20日
公開日
912字
完結済
配信者、北口零さんの 『北口眼鏡書店』という朗読配信用に提供した作品です https://x.com/ReiKitaguchi/status/1913510062888546509?t=8AqZVygyExbXv-0VXo6UpQ&s=19

立ち入り禁止の旧校舎

ふと気が付くと、僕は薄暗い空間に座っていた。

そのままボーっとしていると『大丈夫?』と聞かれたので『大丈夫』と答えた。

少しずつ思い出した。


クラスの友達と、木造の旧校舎へ肝試しに行こと誘われたんだ。

フェンスを乗り越え、グラウンドを駆け抜け、靴も脱がずに旧校舎へ上がった。

『ギャー、こえー!』

みんなで探索するのかと思ったら、思い思いに教室の扉を開けたり、勝手に走り出したり、持って来た木の棒でその辺の物を叩いたり。

女子がいたら『ちょっと、男子!』とか言い出す感じだ。

僕は怖がりだから、友達みたいにはしゃげず、暗闇に目を慣らしながら手近な教室へ入ってみた。

黒板も、机も椅子も、普段使っている物と変わらないけど、壁や床が木でできているだけで、昔にタイムスリップしたみたいだ。

そこで何か光る物を見かけ振り返ると、足がもつれて転んでしまった。

そこで頭でも打ったのだろう、意識を失ってしまった。…らしい。


「オレの顔を見て倒れるから、どうした?って思ったよ」

「あ…、ゴメン」

「別に良いって。暗いから緊張してたんだろ」

「何かが光った気がして…」

「光った?…もしかして、コレ?」

彼は掛けていたメガネを、軽く指で押し上げた。

「そう…、かも」

「きっと月の光が反射して光ったんだ」

「うん、そうだね」

「そろそろ立てそう?」

「僕は大丈夫だから、先に行って」

「何言ってるんだよ。ビックリするたびに倒れてたら、行方不明扱いにされちゃうぞ」

「それもそうだね」

僕は、ヘニャっと笑った。

彼に手を引かれ立ち上がると、他の友達を探して歩き出した。

窓の外には満天の星空。

いつも見えている電車や車の明かりも、ここからだと見えない。

まるで、旧校舎だけが世界に取り残されたみたいだ。

僕たちは手をつないだまま、暗い廊下を歩きだした。


そう言えば、クラスメイトにメガネを掛けた男子っていたっけ?

家へ帰ったときに、コンタクト外してメガネにしたのかな。

それに、彼の名前も思い出せない。

クラス替えしたばかりだけど、クラスメイトだから知らないはずもないし。

あと、彼の手が、フライドチキンの骨みたいに細いのも気になる。

まあ、いっか。

今日、仲良くなったんだし、これからもっと遊べば良いんだから…。

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