―風は時代を駆け、侍はスーツを纏う―
東京の一角で「何か」が起こった。
時空の歪み、激しい稲妻。
その日以降、無数の叫びが聞こえるようになった。
「働く意味が、わからない……」
その声に呼ばれるように、「5つの影」が、現代に降り立った。
【現代・東京】
満員電車。
詰め込まれるスーツ姿のサラリーマンたち。
鳴り響く通知音、長時間労働、ハラスメント、成果主義、納得できぬ評価。
いつから自分たちは会社の「駒」となったのか。
いつから先方の顔色を伺い、本音を話せなくなったのか。
何故画面ばかりを見て対面のコミュニケーションを避けるようになったのか。
何故いつも営業成績のプレッシャーに押し潰され体調を崩すのか。
この世に自分の居場所となる職場があるのか。
※※※
ネオンに染まるオフィス街。一人の若手社員はコンビニ前で缶コーヒー片手に、ぽつりとつぶやく。
「俺、なんで働いてんだろうな……」
別の若手社員は涙を抑えて帰路につく。
『まだ出来ていないのか?』『飲み会には絶対出席だ』『お前のせいで俺が叱られるのだ』
思い出すだけでゾッとする言葉の数々。
「私、もう働きたくない……」
他にもスーツ姿のサラリーマン達が皆、俯いてため息をつく。
その時、
「呼び声、届いた」
街のスピーカーが一瞬ザザッとノイズを発し、次の瞬間、空を裂くように黒いスーツの影が現れる。
ビルの屋上に立つ、5人の男たち。
風にたなびくネクタイとマント、異様なオーラを放つスーツ。
黒の総帥、堂々たる声を放つ。
「この現代は、腐っている。心なき組織、魂なき労働。
だが……まだ戦える者がいるならば、俺たちは斬る。救う。導く」
「「「「「我らスーツ侍! ここに見参!」」」」」
黒の統括戦士、ノブナガ。
「古き制度は燃やし尽くす。働く全ての者に、明日と希望を見せるために」
金の営業戦士、ヒデヨシ。
「さあ、今日から笑って交渉だ! お前たちの夢、俺が通すからさ!」
紅の技術戦士、シンゲン。
「現場の声を聞き、現場を守れぬ者に、指揮官の資格なし!」
蒼の経理戦士、イエヤス。
「数字は嘘をつかぬ。だからこそ、誤魔化す者を許さん」
白の人事戦士、ケンシン。
「この刃は、声なき者のために振るわれる。義を貫け、個性を尊重せよ」
戦国より甦りし5人の魂。彼らは名もなきサラリーマンを救うため、この時代の戦場に降り立つ。
「残業を断て、理不尽を斬れ! 俺たちが、お前を守る」