ざわりざわりと猫の舌の様なもので舐められている。
目は目隠しをされて何も見えないし、耳を塞がれているので何も聞こえない。手足は拘束されて身動きも取れない。
わかるのはここに捉えられてもう数日が過ぎたということ。
その間、飲み物も食べ物も与えられず喉の渇きと空腹が限界まで来ていた。
目を隠されているため時間の感覚がなく、今どれくらい経ったのか正確には分からないが、このままだと餓死することはなんとなくわかった。
(俺死ぬのか)
そう自覚して1番に思ったのが安息だった。この苦しみから解放されるのなら死ぬのがいい。出来れば苦しまずに眠る様に死にたい。
そんなことを思いながら目隠しされていた目をとじた。
「ちゃん…み…みっちゃん」
目を開けるとそこは見慣れた事務所だった。俺はソファに横になっていて、良太がふくれっつらで立っていた。
「みっちゃんまた徹夜したの?昼間寝るなら夜寝てってこの前もいったよね?」
「うるさいな。お前は俺のお母さんか」
「こんな不出来な子を産んだ覚えはありません」
良太は三国の手を取って無理やりソファに座らせた。
(そういえば今日は依頼入ってたんだっけ。寝過ごすところだった)
今日の依頼は人探し。資料や依頼主の持ち物を調べているうちに眠ってしまった様だった。机の穴には乱雑に置かれた資料などでぐちゃぐちゃになっていた。
「ほら、急がないと依頼主きちゃうから片付けて」
良太に急かされて三国は渋々資料などを片付けた。
その時ピンポンと呼び鈴がなったので良太がいそいそと入り口に向かって行った。
扉を開くとそこには亜麻色のふわふわした髪で目がクリクリとして、少し幼なげな面差しの女性が立っていた。