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第21話 「交差」

「絶体絶命のとき...

  ”アイツ”は颯爽と現れた

   こうして俺たちの『反転攻勢』が始まったんだ」



「ヤスヒロなのか...?」


「ああ、お前に東北地方で完膚なきまでに打ちのめされた、な」


「なぜ助けに来た?」


「あの日...お前に敗れた日から、俺に処分命令が下った。その日を境に俺は『自由』になれたんだ。誰の命令にも従う必要がない。自分の意志でなんでもできる。まさに『自由』だ。それを与えてくれたのは他でもない、お前だ。俺は借りが嫌いだ...。だが、作ってしまった以上、返さなければならない。俺がここに来た理由は、それだけだ」


「やめておけ、死ぬぞ」


次の瞬間、二人のもとに幻日が4つほど飛んできた。


「マズイな...。おい!逃げるぞ!...何をしている?」


N・ヤスヒロは両手をがっしりと握り合わせる。


「QUEST...stage2」


大気がしびれ始めた。

次にN・ヤスヒロは腕をクロスさせた。


そして、


「CROSS BEAM!!」


7つほどの光弾を飛ばす。


うち4つは幻日とぶつかり合い、相殺した。

空中で大爆発が起きる。


(コイツ...前よりも確実に強くなっている...!)


数秒後、爆煙を通過し、光弾がソレイユの目の前に現れた。


「!?」


消えかかる爆煙の向こうで新たな大爆発が起きる。


「お前...この期間で何があった?」


「言ったはずだ。『処分命令』が下ったと。”処分”のために幾度と世界国家は俺に刺客を送ってきた...。だが、度重なる戦いで、俺は更なるパワーアップを果たしたのさ...」


爆煙が消え去ると、片膝をつき、起き上がろうとするソレイユの姿が見えた。


(ダメージが通った!これなら...勝てる!)


「今のは結構効いたぞ...。だが、タダでやられる俺だと思うな」


「言われなくとも...それぐらいは分かる」


そうは言ってるものの、ティエラの表情からは少しばかりの余裕がうかがえる。


「スペクトル!」


N・ヤスヒロは突然ティエラの肩に触れた。


「Rappid Reading!」


次の瞬間、目の前にはソレイユがいた。


「待て!今ソイツに触れれば...」


「分かっている。俺に考えがある...」


N・ヤスヒロは両手をソレイユにかざす。


「何のつもりだ?俺の目の前にわざわざ来て...そんなに死にたいか?」


「その余裕の表情...今から粉砕してやるぜ。QUEST...stage4」


辺りが青白い光に包まれる。

そして、それは大きなエネルギーの爆発となって膨張し始めた。


「”光”とともに散れ...!Ultimate!!」


N・ヤスヒロがそう唱えた直後、一帯で巨大な核爆発が発生した。


「おい...この爆発...俺たちも巻き込まれるのではないか?」


「心配するな。俺から離れなければ大丈夫だ。UltimateはQUEST stage4によって成せる技...Cutting Edge scrambleを応用して完成する技だ。四方八方でCutting Edgeを起こすことで辺り一帯の原子を削り、その際に発生する原子核のエネルギー爆発を連鎖させる。つまり、爆発が起きている場所は『削られている空間』。そして今俺たちがいるのは『通常空間』。この二つの空間の差異が境界を形成し、俺たちの防護壁となるんだ」


「なるほど...で?代償は出るのか?」


「ああ。今から俺は2時間動けない」


「!?それを知っていながら何故...!」


「だから言っただろう?『考えがある』、と...。Ultimateを使用した後、俺の体内のエネルギーは活動を停止する。所謂仮死状態だ。そこでお前の出番だ。お前は原子までもを自由自在に扱える。ならば、俺の体内のエネルギーを無理矢理動かして俺の身体を”起こす”こともできるのではないか?」


「確かに...いける。それで永久機関ができるんじゃないか?」


「いや、それは無理だ。QUEST stage4でないとUltimateは使用できない。そしてQUESTは相当な負荷がかかる。なにせ、身体能力を『無理矢理』上昇させる技だからな」


「なら限界は...」


「最高でも...あと2回か...。1回は必ずできる。それは保証しよう」


「ならあと1回として考えたほうが良さそうだな...」


爆煙が止むと、ソレイユが倒れていた。


「...やったか?」


「おいヤスヒロ。それは禁句だ」


ソレイユは起き上がり始めた。だが、今ので大ダメージを負ったことに変わりはない。


(さっきは初見殺しで何とかなったが、次は間違いなくそうはいかない...。だとしたら...)


「動きを封じる必要があるな」


「ああ」


ソレイユは起き上がる。


ついさっきまで発せられていた白く淡い光が消えている。


(...!アイツからさっきまでの熱が感じられない...!)


「ここまで手こずるとはな...。おかげで時間切れだ...」


『ソル・モード』には制限時間とインターバルがある。

どちらも時間は、10分。


つまり...


(今がチャンス...!)


ティエラは即座にN・ヤスヒロの体内のエネルギーを動かす。

すると、N・ヤスヒロは起き上がった。成功だ。QUESTは解除されている。

間髪入れずに2人は一斉にソレイユに襲い掛かる。


N・ヤスヒロはRappid Readingでソレイユの背後に回った。

ソレイユは即座に反応し、N・ヤスヒロの顔面に肘打ちを喰らわせる。

すると、N・ヤスヒロに気を取られたこの一瞬のすきを狙って、ティエラはソレイユの腹部に思いっきり蹴りをくらわせた。

2人ともできるだけ大がかりな能力を使っていない。


実は二人には作戦があるのだ。


ソレイユはうずくまりながら日進でその場から切り抜けるも、N・ヤスヒロが彼を逃がさない。Rappid Readingで執拗に追い回し、攻撃を仕掛ける。


2人は辺り一帯で超高速の激戦を繰り広げた。


次の瞬間、ティエラはN・ヤスヒロがこちらに目をやった後、ある場所の溶岩湖へと目を向けたのを見た。

『次はそこに来る』という合図だろう。

即座にティエラはその溶岩湖に先回りする。

するとその直後、ソレイユが目の前に現れた。


ティエラを見据えたソレイユだったが、背後に現れたN・ヤスヒロにより、頭部から蹴っ飛ばされ、地面にたたきつけられそうになった。

その瞬間を狙い、ティエラは思いっきりソレイユの腹部に正拳突きをお見舞いした。


「「ビンゴ...!」」


ソレイユはついに膝をついた。


と、そのときだった。


「時間切れだ...!」


ソレイユの身体から再び白く淡い光が発せられ始めた。


「お前はもう動けないのだろう?今更ムダだ」


「そういうお前たちも体力がないんじゃないのか?さっきからほとんど能力を使ってないが...」


「そうだな...。だが、残念ながらお前の予想はハズレだ、ソレイユ。ヤスヒロ!!」


「ああ!!」


N・ヤスヒロは再びQUEST stage4を発動する。


「あの大爆発か...。残念ながらあの程度で俺は死なん」


「ああ...知っているともさ。ティエラ!!」


ティエラが虚空に手を突き出す。


「ソレイユ...。お前は強い。1つ、お前に問う。お前、俺たちの仲間にならないか?」


「何を今更...。断る」


「お前も分かっているのだろう?この”世界”は間違っている。それが真実だ。こんな”世界”じゃなければ、お前が”最後の一人”になることも無かったんだ」


「確かに、お前の言うことは真実だ、ティエラ。だが、俺はそれを背負う。なにせ、俺は皆から託されているからな...。全く...。真実とは、独りで背負うには重すぎるものだ...」


そう言うと、ソレイユは鼻で少し笑った。


「そうか...。残念だ。だけど...それが一番、お前らしいよ」


辺りが紫色の光に包まれる。


「...?さっきのとまでは違うな...」


「見ていろ、ソレイユ...。俺たちは...太陽を『超越』する!」


次の瞬間、辺りがカッと激しい光に襲われた。


「「PROMINENCE!!」」


とてつもない発光、とてつもない大爆発が起こった。

爆発は10分以上、延々と続いた。





ついに爆発が止んだ。ソレイユはそこにはいない。

太陽をも超えるエネルギーの爆発に耐えきれずに消し飛んでしまったのだ。


(ソレイユ...お前は最期の最期まで頭の堅い奴だったよ...。だけど、お前の責任感の強いところ...嫌いじゃなかったぞ...)


ティエラは一時虚空を見つめた。


「...なあ、ヤスヒロ」


「?」


「まだ...手伝ってくれるか?」


「そうだな...。ま、良いだろう。どうせ暇だしな。それに...もっと自分の限界が知りたくなってきた」


「............よし、行こう。残るはヴィレイ・アシュラ...ただ一人...!」


2人は歩き出した。


2人の進む先には、もう2人が目で見られるほどの距離のエレノイアがあった。

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