天国に地獄、あの世、来世。
幽霊という存在も信じてはいない。
死後、人の魂に行方などない。
僕はそう考えていたからこそ、運転中の交通事故であっけなくこの二十八年間の人生を幕を下ろしたときも、(あ、僕は死ぬんだ)と全てを受け入れて心中穏やかに逝くことができた。
――そう思っていた。
『奇妙な運命に翻弄され、百年余りの寿命も全うできないような迷える子羊たちへ』
肉体から分離された魂が、正体不明の謎の声にどうしてか引き寄せられていく。
次第に天上へと導かれる僕。その意識は遥か成層圏を越えて闇のなかに到達すると、僕と同じように光り輝く魂だけの存在がずらりと数えきれないほど並んだ。
『君たちを私主催のゲームへ招待しよう』
非科学的なものは何も信じていないけれど。
僕の人生の終幕は、とんでもない出来事への幕開けでもあった。
『いま一度人生を謳歌するための【蘇生権】を懸けて、君たちは死後の世界で、命を賭けた【殺し合い】をしてもらう』
だけど、僕は蘇生になど興味ないから、それはとても迷惑な話だった。