それから数年後—
「みんな、来てくれたんだね!」
少し大人の雰囲気になった天音が、嬉しそうに言った。彼女は保育士の制服を着たままだった。
「当たり前だろ、約束だもん」
美羽は相変わらず元気いっぱいだ。体育大学のジャージ姿が、彼女の活発さをより引き立てている。
「遅れてすみません」
眼鏡の直人が小走りでやってきた。手には最新の研究書が握られている。
「研究に夢中で、時間を忘れてしまいました」
「相変わらずだね」
蓮が優しく微笑んだ。穏やかな雰囲気は昔のままだが、大学の心理学研究室での経験が彼に一層の深みを与えていた。
「お、全員揃ったな」
警察官の制服を着た晴翔がやってきた。肩にはまだ新米の
「懐かしいな、この場所」
「本当に…」
天音は桜を見上げた。
「あれから何年経ったかな」
「正確には…」
直人が言いかけたが、全員が声を合わせて止めた。
「細かいことはいいの!」
笑い声が桜の下に響き渡った。
「でも、本当に色々あったよね」
美羽が懐かしそうに言った。
「『天秤の守護者』の戦い…今思うと夢みたい」
「夢じゃないよ」
蓮は静かに言った。
「僕には、今でもあの日のことが鮮明に見える」
「そうですね」
直人も頷いた。
「現在の科学では説明できないことも多いですが、私たちが経験したことは紛れもない真実です」
「あれから、旧神たちの動きはないのか?」
晴翔が天音に尋ねた。
「ない…」
天音はペンダントに手を当てた。今でも彼女はそれを身に付けていた。
「でも、いつか目覚める可能性はあるかもしれない」
「その時は」
晴翔はきっぱりと言った。
「また俺たちが立ち向かう」
「うん」
全員が頷いた。
「でも、今は…」
天音は穏やかに微笑んだ。
「平和な日々を楽しもう」
「そうだね!」
美羽は元気よく手を叩いた。
「それじゃあ、恒例の『天秤の守護者』同窓会、始めよう!」
「今年も
蓮が提案した。
「そうしよう」
天音も賛成した。
五人は並んで歩き始めた。桜の花びらが彼らの道を優しく彩る。
その道は、未知の未来へと続いていた。
―― 了 ――