放課後、俺たちは公園へ向かった。手を繋ぎ、肩を寄せ合いながら、ゆっくりと歩く。夕暮れの柔らかな光が二人の影を長く伸ばしていた。
ここは、俺たちが初めて気持ちを通わせた公園。ベンチに座り、手を繋いだまま、空を見上げる。言葉を交わさなくても、ただ二人で並んで座っているだけで心が温かくなる。
「叶翔、今日はありがとう」
突然のお礼に、不思議そうに陽翔を見つめる。
「何が? 俺、何かした?」
陽翔は俺の髪を指差し、くしゃっと笑った。
そうだ。陽翔のリクエストに応えて、前髪を上げたのだ。自分らしくない行動だけど、陽翔のためなら何でもしたいと思ってしまう。そんな気持ちが、今日の勇気につながった。
自分の行動が恥ずかしくなり、顔が熱くなる。
「変、だった?」
「ううん。すごく似合ってる」
陽翔は俺を抱きしめ、額にキスをした。陽翔の唇の温かさが、彼の愛情そのもののように感じられた。
俺はバッグから、そっと小さな箱を取り出した。
「陽翔、お誕生日おめでとう。これ……」
プレゼントを手渡すと、陽翔の顔がぱっと明るくなった。
「うそ? ありがとう! 開けていい?」
俺が頷くと、陽翔は恐る恐る箱を開け、目を見開いた。
「……ピアス?」
「俺と、半分こ」
俺は耳元を見せた。箱の中にあったピアスの片割れが、耳に光っている。
「この宝石、陽翔の誕生日石のトパーズなんだ。陽翔の何かを身に付けていたくて……」
恥ずかしさで声が小さくなる。
「本当は指輪とかも考えたんだけど……。それは重いかなって」
「指輪でもよかったのに!」
陽翔は俺をぎゅっと抱きしめ、耳元で囁いた。
「来年も、再来年も、その先も……ずっと一緒にいたいな」
頬を擦り付けながら、続ける。
「そうなったら……もう、恋人っていうより、家族って感じ?」
小さく笑う陽翔の声は、低く、真剣味を帯びていた。
「……まだ早いよ、そんなの。でも……その言葉、好き」
俺は陽翔の背中に腕を回し、しっかりと抱きしめた。
俺は、目を合わせるのが怖かった。触れること、好きになること、全部が怖かった。でも、陽翔がそばにいてくれるなら、怖くても前に進める。未来に、名前をつけていける。
「陽翔となら……全部信じられる。今も……これからも」
陽翔は太陽のような笑顔で俺を見つめた。その瞳に映る自分は、もう昔のように怯えてはいなかった。
隣に陽翔がいる。それだけで、今日という日が何度でも好きになれる。
陽翔と目を合わせるたび、好きが増えていく。それが、俺の毎日だ。