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第48話 止まらないキス

壁際のテレビでは、映画がかかっている。カナエが棚から引っ張り出してきた

ラブロマンスはもう終盤だ。この映画は最後にはハッピーエンドにはなるもの

の、それまでの喧嘩のシーンが派手で、もはやコメディに近い。


マユミは薄目にそれを見ながら、うとうととし始める。よくこの映画をかけな

がら寝たのが習慣になっているのか、子守唄だ。

ふと隣のカナエを見る。彼はじっと映画を見ている。少し暗い部屋の中で彼の

瞳がキラキラと輝いていた。


マユミは盗み見るようにカナエを見ていた。

・・・こんな顔をしてたっけ・・・。こんな目をしてたっけ。眠いから・・・かな?

もっと弟みたいな感じで、可愛かったような気がする。こんな・・・。


唇を結んで目を逸らした。心臓がドキドキと走り出す。


待って・・・。本当に僕はどうかしてる。・・・だって、僕はタカヤさんが好きなん

だよ?タカヤさんはカナエ君が好きで・・・だからカナエ君はライバルなのに。

何で?


『はあ。』

カナエの溜息が耳に聞こえて、再び視線を戻す。カナエは大きく伸びをすると

マユミに向き合った。少し動けばキスが出来る距離だ。


『・・・面白いね、これ。』

『うん。』


『ん?マユ・・・寝てたの?』

すっとカナエの肩が動いて、マユミの額に彼の頭が触れた。

『・・・ごめん。なんかBGMが良すぎなんだよね。』


マユミは体を起こしてカナエの頭を肩に乗せるとTVを見る。手の平がじんわ

りと熱い。

『ああ・・・わかる。今もエンドロール流れてるけど、相当良い。マユ、趣味い

いね。』

『ありがと。』


緊張してるのか声が上ずった気がして、ちらちとカナエを見た。カナエは微笑

を浮かべると体をすり寄せるようにして近づいた。


『・・・マユ?』

『何?』

『緊張してる?もしかして・・・。』


そう言われてカナエの顔を見る、暗がりの中なのに頬がピンクに染まっていた


『・・・して・・るかも。』

『正直・・・俺もしてる。』

カナエの手がマユミの手に重なって指が絡まった。


『マユ・・・。』

『うん?』


指先まで心臓みたいにドクドクとうるさい。喉がからからになって、カナエの

唇に視線が落ちる。

『・・・俺の勘違いだったらごめん。』


『うん。』

手の平が重なって指が食い込んだ。


『マユ・・・俺のこと、好き?』

唇から零れた『好き?』が耳に溶けて、マユミはカナエにぐっと近づいた。吐

息がかかる距離で頬に唇が触れる。

・・・熱い。


『・・・うん。』


『好きって・・・言って。』

カナエの声が震えていた。


ドクッと心臓が大きく鳴った。唇を触れさせて呼吸を奪う。カナエの髪を撫で

ると奥深くまで侵入する。吐息が漏れて舌が解けた。


『カナエ君が好きだ。』

カナエの返事も待たずにマユミの手は彼のシャツを剥ぎ取った。

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