第三者side
「俺はエイドハンター。七瀬 透馬だ」
「お父、さん……?」
莉乃は驚いたような表情で透馬を見る。
「バカな!!お前は死んだはずだ!!生きていたのか!?」
立ち上がったゲイルも驚愕しながら声を上げた。
「ああ。ライナーカードのお陰でな」
透馬は刀身をゲイルに向ける。
「行くぞ。ゲイル」
「今更出てきて何が出来る!!」
ゲイルはそう言って透馬に向かって突っ込んで行く。
「はあああっ!!」
「ふっ!!」
透馬はゲイルを鯨刻で受け止める。
「何!?」
「はああっ!」
そのままゲイルを弾き、腹部に蹴りを入れる。
『ライナーホエール!フィニッシュ!』
「ぐあああっ!!」
ゲイルは大きく吹き飛ぶ。
「まさか、ここまで強くなっているとは……!!」
「当たり前だ。お前のそれと同じで俺もこのチェンジャーを俺専用にブラッシュアップしてるからな」
透馬はダークオムニバスチェンジャーを指差しながらそう言った。
「大丈夫?莉乃」
「お父さん……」
透馬は莉乃に手を差し伸べる。
彼女はその手を取る。
「とりあえず仕切り直しだ」
そう言うと列車が現れ、3人を乗せて姿を消した。
「クソッ!」
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「バカっ!!」
パシッと言う音と共に春香が透馬をビンタしていた。
「すまなかった」
「莉乃ちゃんがどれだけ寂しい思いをしたと思ってるの!?どれだけ悲しい思いをしたと思ってるの!?」
春香は透馬の胸ぐらを掴み上げてそう言う。
「七瀬先生!落ち着いてください!」
話を聞いて喫茶キトゥンに駆けつけた美香達が透馬から春香を引き離す。
「颯斗は大丈夫?」
「ええ。擦り傷くらいでしたので問題ないです」
公人の言葉に莉乃はそう答える。
「莉乃……」
「お父さんだったんですね」
「え?」
「ユニコーンカードを送ってきたのは」
「……ああ」
「なら、ロボットとドラゴンのカードもお父さんが渡したんですか?」
「その通りだ」
「じゃあ、何で生きてるってことを言ってくれなかったんですか?」
「それは……」
「今はそんなことはいいです」
「え?」
「ゲイルを何とかする方が先ですから」
「そうだな」
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「七瀬 透馬が生きていただと!?」
ガイタはゲイルの言葉を聞いて椅子から勢いよく立ち上がる。
「ああ、間違いない。あの姿、声…エイドハンター七瀬 透馬だった」
「そうか…奴が生きていたか……!!」
ガイタは狂気的な笑みを浮かべる。
「どうする気だ?」
「そんなもの俺がぶっ潰すに決まってるだろ?アイツは俺の因縁の相手なんだからな」
「好きにしろ」
「ああ。好きにさせてもらう」
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2人はカウンターに並んで座り、話をしていた。
「戦えるのは10分未満、ですか?」
「ああ…10年くらい経ったとはいえ、あの時の傷のせいで10分以上戦えば体が持たない」
「だからあの時引いたんですね」
「その通りだ」
「ゲイルのことですから一度戦ったらかなり対応してきそうですね……」
「……なぁ」
「何ですか?」
「何で敬語なんだ?お父さん的にはもうちょっとフランクに接して欲しいんだけど……」
「ずっと音信不通だった人が何を言っているんですか」
「うぐっ……!」
真顔でのレスポンスに透馬は渋い表情をする。
「うわぁ…今のは効いたぞ……」
「でも、悪いのは透馬さんだしね〜……」
「自業自得だね」
3人は2人の会話の様子を見ながらコソコソとそんなことを言い合っている。
「おいそこぉ!莉乃と仲良いからって俺にマウント取るんじゃなぁい!!」
透馬はビシッと指差して公人達に文句を垂れる。
「……みっともないですよ」
「すいません」
莉乃に言われ、透馬は素直に椅子に座り直す。
「なんかいいわね」
「だね」
「七瀬さんもどこか嬉しそうだし」
そんなことを話していると。
「莉乃……」
「颯斗君!?大丈夫ですか?」
目が覚めた颯斗が店に来ていた。
莉乃はすぐさま駆け寄る。
「ああ。大丈夫だ…それより……」
颯斗は透馬を見る。
「あなたが莉乃の父親か」
「そうだ」
「……何で」
「え?」
「何で莉乃を1人にしたぁ!!」
颯斗は透馬に怒号を放つ。
「莉乃がこれまでどんな思いで過ごしてきたかアンタに分かるのかよ!!」
「颯斗君……」
「娘を泣かしといてふざけんな!!」
「もういいですから……」
「いい訳ねぇ!!こう言うやつははっきり言っとかないとわかんねぇんだよ!!」
「落ち着けよ颯斗」
見ていられなくなった公人が颯斗を宥めに掛かる。
「今言ったって仕方ないだろ」
「だけど……!!」
「お前は1回ゆっくり休め。な?」
「わかった……」
公人は颯斗を連れて奥へと向かった。
「…………………………」
「あの……」
「ちょっと外の空気吸ってくる」
そう言って透馬は店を出た。
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透馬side
キトゥンを出た俺は1人、橋の上へと来ていた。
「ふぅ〜……」
缶コーヒー片手にため息を吐く。
『莉乃がこれまでどんな思いで過ごしてきたかアンタに分かるのかよ!!』
「……情けないな」
自虐気味呟く。
俺は彼の言う通り莉乃の気持ちを考えられなかった。
最低だ。
「そんなのが父親か……今更なんだって話だよな……」
そんなところに。
「すまない。ちょっといいかな?」
「え?」
声を掛けられ、振り返れば。
「警察なんだが……」
警察手帳を見せられ、そこに書いていた名前は。
「氷室 誠……ああ。あの子のお父さんか」
「え?颯斗を知っているんですか?」
「ええ。娘がお世話になってますからね」
「娘…ということはやはりあなたは……」
「莉乃の父親の七瀬 透馬です」
「生きていらしたんですか?」
「ええ。一応」
「では、娘さんとはもう?」
「はい。会ってます」
「そうでしたか!」
氷室さんはホッと胸を撫で下ろしたような表情をする。
「……ですが、あなたの息子さんに怒られてしまいました」
「え?」
「莉乃の気持ちを考えたことあるのか、って」
「そうでしたか…息子が大変失礼なことを……」
「いえ、事実ですから。ずっと連絡も取らず、放って置いたのは俺ですから」
「でも、そうして置いたのはあなたにも何か事情があったからでしょう?」
「それはそうですけど……」
「莉乃ちゃんはそれをわかっているはずですよ」
「そう、ですかね……」
「あの子は聡いですから。それに誰よりも大人っぽく、誰よりも子供っぽい」
「えっ?」
「莉乃ちゃんは自分の弱さを自分の強さで押し殺しています。誰にも甘えることなく、自分の過酷な運命に立ち向かっている。莉乃ちゃんが心の底から甘えられるのはあなただけだと思いますよ」
「氷室さん……」
「誠で構わない」
「なら、俺も透馬で敬語じゃなくて構いません!」
「そうか。なら、そうさせて貰おう。透馬君」
「はい。誠さん」
そう言って俺たちはガッチリ握手をした。
そんな時だった。
「見つけたぞ!七瀬 透馬!!」
「お前は……」
「防衛大臣!?」
誠さんは驚いたように言う。
「随分派手に暴れてるみたいだな。夜さんよぉ?」
「うるさい!お前だけは…お前だけはこの俺がぶっ潰す!!」
「何度でも止めてやるよ。お前らのチンケな計画なんざな」
俺は誠を庇うように前に出る。
「うおおおっ!!」
すると夜は怪人態に姿を変える。
「行け!」
すると大量のソルジャーオミナスが現れる。
「多勢に無勢か。面白れぇ!」
俺はそう言ってソルジャーオミナスに殴りかかる。
「ふっ!はああっ!せやあっ!」
連続パンチに回し蹴り、攻撃はバク宙やバタフライで回避する。
するとそこに。
「お父さん!」
「莉乃!」
「ソルジャーオミナス…またですか!」
「カードが元になっていないオミナスは変えが効くからな」
「なるほど。そういうことですか」
「エイドヴァルキリー……!!」
「莉乃、オミナスを頼めるか?」
「え?」
「ガイタは俺が決着をつける」
俺はそう言って莉乃の前に立つ。
「ですが……!」
「これは俺の過去との決着だ。あの日あの時逃げられたアイツとの、な」
「わかりました」
その言葉を聞いて俺はオミナスの中に突っ込んで行く。
「透馬君!!」
「氷室刑事は下がっていてください」
莉乃は誠さんを宥めていた。
「行くぞ!!」
そう言って俺はガイタに飛びかかった。
「参ります」
『フォートレス!』
『ユニコーン!』
「オムニバスチェンジ!」
『要塞の一角獣!フォートレスユニコーン!』
「はああっ!」
莉乃はオムニバスバスターでソルジャーオミナスに斬りかかった。
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第三者side
「七瀬 透馬!!」
「ガイタ……お前は本当に懲りないやつだな」
「貴様に言われたくない!!」
「だが、ここで決着をつける」
透馬はそう言ってカードをスキャンする。
『ライナー!』
『ホエール!』
「オムニバスチェンジ!」
『定刻の巨獣!ライナーホエール!』
「さぁ、行くぜ?」
鯨刻片手に透馬はそう言った。
「掛かってこい!!」
「はああっ!!」
ガイタは振り下ろされた鯨刻を簡単に受け止める。
「さすがだな!」
透馬はそう言って腹部に蹴りを入れる。
「ぐっ…!」
ガイタは数歩後ずさる。
それを見逃す透馬ではない。
「はああっ!!」
鯨刻を横凪に払う。
「ぐああっ!」
斬撃を受け、更に数歩後退する。
「まだまだ行くぜ!」
そう言って透馬は十字の斬撃を放つ。
「そんなもの!!」
ガイタはそう言って虎のエネルギーを放出し、相殺する。
「やるな!」
「お父さん!」
その声に振り返れば、莉乃がカードを投げていた。
「サンキュー!」
透馬はそれを受け取る。
『ナイト!』
『ナイト!アビリティ!』
『オムニバスブレード!』
「二刀流で行くぜ!」
透馬は体を回転させながら、斬撃を喰らわせる。
「ぐっ……!」
更に後ろ回し蹴りを側頭部に放つ。
「ぐあああっ!!」
ガイタは地面を転がる。
『ライナー!』
『ライナー!ブースター!』
『ライナーホエール!フィニッシュ!』
「はあああっ!!」
透馬はX字の斬撃を放つ。
「クソがあっ!!」
ガイタは立ち上がり、それを受け止める。
「もう1発いくぜ!」
『ライナーホエール!フィニッシュ!』
透馬は斬撃の上からキックを重ねる。
「ぐあああっ!!」
ガイタは大きく吹き飛び、地面を転がる。
「まだだ…まだ終わらないぞおおお!!」
ガイタが雄叫びを上げるとソルジャーオミナスが次々とガイタに取り込まれていく。
「な、何ですか!?」
「マジかよ……!」
「ウオオオオオオオッ!!ぶっ潰す!!!」
2回りほど大きくなったガイタは腕で薙ぎ払い攻撃をしてくる。
「うあああっ!!」
透馬にそれは直撃し、莉乃の方へと吹き飛ばされる。
「大丈夫ですか!?」
「ああ……!」
すぐさま態勢を立て直してそう告げる。
「お前も随分と強くなったみたいだな?だが、俺も回復だけに時間を使ってたわけじゃない!」
透馬はそう言って立ち上がり、ライナーカードとホエールカードを取り出す。
「今こそお前達の力を見せる時だ!」
透馬のその言葉に呼応するようにカードが光り輝く。
「何だ!?」
「これは一体……」
2人は驚いた様子で透馬を見る。
「見せてやるぜ!」
そう言ってカードをスキャンする。
『スペリオルライナー!』
『スペリオルホエール!』
「オムニバスチェンジ!」
『定刻の超巨獣!ライナーホエール!スペリオル!』
「何だその姿は!?」
「ライナーホエールスペリオル……これが過去と決着を着ける力だ!」
そう言って鯨刻を一振りすれば、刀身が伸び、ガイタの体にダメージを与える。
「ぐああああっ!!」
「お前じゃもう勝てない!!」
「うるさい!!この世界は我々“パンデモニウム”が支配するのだあああ!!」
「そんなことにはならない!!俺が…俺たちがこの世界を守って見せる!」
透馬はチェンジャーの外側を回転させ、ジャンプする。
「これで終わりだ!!」
『ライナーホエール!スペリオルフィニッシュ!』
「はああああああっ!!」
透馬のキックはガイタを貫く。
「七瀬 透馬ぁぁぁ!!」
そんな雄叫びと共にガイタは爆散した。
「ふぅ……」
透馬は一息吐きつつ変身解除した。
「すごいんですね」
「そうだろ?」
「すぐに調子に乗るのはやめた方がいいと思いますけど」
莉乃は表情ひとつ変えることなくそう言う。
「よかったね。莉乃ちゃん」
「氷室刑事」
「透馬君、頑張れ」
誠は透馬の肩をポンと叩いて去っていった。
「(俺ももっと頑張らないとな!)」
透馬はそう心に誓った。
To be continue……