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世界滅亡エンド回避どきどきメモリアル~お兄ちゃん?妹は攻略不可キャラです!~
世界滅亡エンド回避どきどきメモリアル~お兄ちゃん?妹は攻略不可キャラです!~
ももちく
現代ファンタジー都市ファンタジー
2025年05月13日
公開日
1.1万字
連載中
私はどきどきメモリアルの妹キャラ朝倉七海に転生した! そこで待っていたのは福〇潤ボイスでさらに福〇潤が担当したあのキャラとそっくり容姿のお兄ちゃんだった! チョマテヨ! 神様、これ、どんな采配!? お兄ちゃんが攻略しないといけないのは宇宙人、未来人、超能力者の3人のヒロイン。 どれも一癖二癖ある彼女たち。 お兄ちゃん……頑張って世界を滅亡から救ってね! でも……お兄ちゃんにどきどきしちゃう自分がいる。 世界とお兄ちゃんを天秤にかけつつ、危ない恋は加速していく! ドタバタラブコメの開幕でございます!

第1話:お兄ちゃんは福山潤

 おい、神様。なんでこんなことをした! 今すぐあたしとお兄ちゃんを結ばせろ!


「どうしたんだ? ナナミー。顔が赤いぞ?」


 お兄ちゃんの声が福山潤様の声でした……。


 何言ってるかわかんねーよと思われるかもしれませんが、今、私の目の前に福山潤様がいます。


「お兄ちゃん。えっと……メガネ外してくれる?」

「ん? メガネ? それが?」

「いいからっ!」


 お兄ちゃんが瓶底メガネを外してくれた。


 ちくしょーーーーーーー! まんま福山潤ボイスのあのキャラじゃねーか! 神様、どんなチート使ってんのよ!


――――――――

――――

――


 まず、状況説明からさせてもらうわ……。


 こっちの世界に迷い込む前、あたしは新作の恋愛シミュレーションゲーム、胸熱どっきゅんばったんメモリアルを買いにゲームショップに行ったの。


 超常どっきりどっきんぐ合体メモリアルというギリギリR15に届かないくらいの男性向け恋愛ゲーム世界のシリーズ2作目です。


 無事に購入特典付きデラックス版を手に入れて、浮れてスキップらんらんらん♪ で交差点を渡っていると……ドーン! と勢いよく天国にまで轢きとばされちゃいました☆彡


 さて、そんなあたしをかわいそうかわいいと思ったのか、神様が転生させてあげようとおっしゃってくださいました。


 本当にありがとうございます。次の人生はなんとゲームの世界でした。え? 普通に可愛いわんこちゃんじゃダメだったわけ?


 私が飛ばされたゲーム世界の略称は『どきどきメモリアル』。プレイ当時、フラグ管理が超面倒で「くそげー!」連呼しながら何回もコントローラを投げさせていただきました。


 開発スタッフの皆さま、ごめんなさい。


 しかし、それでも幾多のイベントをこなして、トゥルーエンドまでたどり着いた時は思わず、涙が溢れてしまいましたの。


 くっ! あんなエンディング、卑怯すぎる!


 神様はおっしゃいました。おぬしがやり込んだ愛してやまない世界で1からやり直してみなさいと。


 正直、ふーーーんあっそ……です。だって、トゥルーエンドまでクリアはしているものの、それでも正直言って、「なんでこんな主人公に女性が惚れまくるんだ?」って疑問しか持ってなかったもん。


 でもね? 実際にこちらの世界にやってきて、お兄ちゃんが目の前に現れた時、その疑念は一瞬で崩壊したわ。


 お兄ちゃんへの第一印象はぼさぼさ髪で瓶底メガネの頼りなさげな優男です。それゆえに油断してました、正直に言えば。


 でもね? お兄ちゃんが口を開いた瞬間、その奥から福山潤ボイスが流れてきましたの!


 腰が抜けるかと思いましたわ……。さらによろめいたあたしをお兄ちゃんが優しく両手で支えてくれたの!


 信じられる? 福山潤様があたしを抱きかかえてくれてるのよ!?


「ナナミー。具合が悪いのか?」

「ううん。大丈夫。ちょっと立ち眩みしただけだからっ!」

「そうか……じゃあ、今日は自分の評判を聞くのはやめておこうかな」


 お兄ちゃん(福山潤)が困り顔になっている。こんなのずる過ぎるっ! 雨に濡れて震えている捨て福山潤みたいな顔してるのよ?


 ええい、あたし! 足に喝を入れろ! 腰をまっすぐに! 姿勢は正しく!


「こほんっ! ううん、大丈夫! お兄ちゃん、待っててね? 今すぐ、表示するからっ♪」


 今のあたしは福山潤、もとい朝倉潤の妹である朝倉七海だ。どきどきメモリアルの主人公であるお兄ちゃんの恋路をサポートする妹キャラだ。


 何の因果かは知らないが、このゲームの開発スタッフは妹を絶対に攻略できないキャラとして設定している。


 実際に自分も血の繋がっている妹に手を出す兄貴は最悪だと生前は思っていた。


 でもね? 聞いて?


 今、目の前でそわそわしている濡れ福山潤はあの福山潤なの。こんなのおかしくない?


 こういう男性向け恋愛ゲームにおける主人公キャラってのはプレイヤーが感情移入できなくなると、主人公キャラはわざと解像度をぼかしてるってのは聞いたことあるわ。


 それゆえ、女性のあたしからすれば、なんでこんな男にヒロインたちが惚れるんだろ? って思ったもん。


 でも、実際にこっち側の世界にやってきて、認識は180度手のひらくるくるドリルになっちゃった!


 そりゃ惚れるわ。福山潤だもん。開発スタッフは今すぐ妹を攻略対象キャラにしてくれませんか?


 それはさておき、今のあたしはお兄ちゃん(福山潤)の頼れる恋のナビゲーターよ。お兄ちゃんのためにタブレットを机の上から取ってくる。


それを部屋の入口に立っているお兄ちゃんにビシッと見せつける。


「んとね? 朱美先輩の評価は『一緒に帰って友達に噂されると恥ずかしい』ね」


――朱実先輩。聖ノブリージュ学園の高校3年生で剣道部所属の松平朱美さんのことよ。生徒会長の次に男子の人気を集めているわ。


 銀髪をポニーテールにしていて、目は吸血鬼のように赤い。さらには女性なら誰しもが羨む端正な美女だ。


 そのミステリアスな姿からは想像できないほどに剣筋が美しい。


 剣道部に所属しているだけあって、プロポーションもバツグン。あたしが女じゃなかったら、絶対に口説き落としたくなっちゃう!


 でも……お兄ちゃんには内緒だけど、朱実先輩は所謂『腐っている』のよね……。それ以上に大変なのは彼女は宇宙人だってこと。


 お兄ちゃん、がんば♪ ヒロインの中で1番難易度が高いからねっ!


「次にお兄ちゃんのクラスメイトの園子さんの評価は『朝倉くんとはただのと、友達なの! 勘違いしないでほしいっ』ねっ」


――宇喜多園子。お兄ちゃんのクラスメイトの女の子。お兄ちゃんは剣道部で園子さんは茶道部。一見、ただのクラスメイトなんだけど……。


 何の縁があってか、お兄ちゃんと園子さんは6月の体育祭の実行委員に選ばれたのよね。


 あたしのイチオシキャラはこの園子さんなのよね。


 女性なら誰しもが憧れる流れるような黒髪……。それが腰まであるの! まさに「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」をそのまま体現した女性ね。


 それでいて陶磁器のような美しい肌……。あたしが男だったら、1年365日、くんかくんかしたくなっちゃうわ!


 さらにこれでおっぱいはGカップ。神はどれほどの武器を園子さんに持たせれば、気が済むのかしら?


 園子さんの容姿をあたしに少しくらい分けてほしいわ。なんであたしはBカップで幼児っぽい姿なのかしら、ぷんぷん!


 しかもゲームとかアニメでよくあるふわふわのピンク髪だし……。嫉妬しかないわっ! ロリコンしか喜ばないでしょ、今のあたしの姿なんて……。


 あーあ、園子さんと比べるとどうしても自分のことを卑下しちゃう。


「大丈夫。ナナミーは俺の一番大切なひとだから」

「んもう! お兄ちゃんのバカ! あたしにそんなこと言っても無意味だからね?」

「ははは……」


 まったく……福山潤ボイスのお兄ちゃんには困っちゃう。園子さんは人類が滅亡に瀕した未来からやってきた未来人だけど、お兄ちゃん、園子さんのために頑張ってね♪


 さて、最後のひとりの評価をお兄ちゃんに教えておかないと。


「んっと。ユキちゃんの評価は『潤さんとデートしたいな』だって。やったじゃん、お兄ちゃん♪」

「そ、そうか。俺、何もしてないんだけどな?」

「う、うん。ユキちゃんは思い込みが激しいタイプ……だからね」


――真田雪。あたしのクラスメイトで部活も同じ家庭部。しかも超能力者だ。お兄ちゃんは本当に目の付け所がひととは違う。いや、違い過ぎる。


 宇宙人、未来人ときて、最後に超能力者だ。


 他の2人は猛烈アタックしないと落とせないのだが、ユキちゃんは普通に会話してるだけでフラグががんがん立ってしまう危険人物すぎるのよね……。


 他のヒロインを攻略しようとすると、障害として現れるのがユキちゃんだ。このどきどきメモリアルには特殊なシステムがある。


 親しくなった女性を一定期間放置しておくと、あたしが今、お兄ちゃんに見せているタブレットの彼女たちのアバターに爆弾マークが表示される。


 そして、その爆弾が爆発したと同時に世界は滅亡する。


 あれ? そう言えば、神様から聞いてなかったな。ユキちゃんについてるこの爆弾が爆発するとゲームみたいに空から隕石が落ちてくるのかしら?


「ねえ、お兄ちゃん。ものは相談だけど……ユキちゃんに会わないようにしてみない?」

「えっ……でも、俺と親しくしたいんだろ? それを無碍にするのはちょっと……な?」

「あたしとしては園子さん推しなのよね~? 試しで良いからさ!」


 お兄ちゃんにとんでもないことを頼んでしまった。後悔、先に立たずとはよく言ったものである。


 三日後、爆弾が爆発したユキちゃんが超能力を使って、地球に隕石を降らせた……。


「あはは、こんな世界、滅びちゃえ!」


 明るすぎる茶髪をショートボブにしているユキちゃんが血涙を流しながら、呪いの言葉をあたしに吐きつけた。


 彼女から視線を上に向けると、巨大な隕石が迫ってきていた。空気が震え、回りの建物が全て吹き飛んでいく。


 ユキちゃんの褐色の肌がさらに黒みを増していく。熱に焼かれている。そして、ユキちゃんと対峙するあたしも高熱で焼かれていく。


 あたしは真っ白になる視界と意識の中、やっちゃったか~~~と思うしかなかった。


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