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第32話 【閑話】グリーンの悲劇2

 オボロロロロロ!!!

 盛大に店の外で吐き出して顔が真っ青なブルーこと、神野蒼太郎を見て

 俺…グリーンこと、若竹隆はこの後間違いなく俺がこいつの家に送らなきゃいけないことに絶望した。


 正義の組織の飲み会。

 一次会で上層部はほとんど帰り、二次会へとヒーローや司令部の奴等を引き連れやってきたはいいが、

 レッドはさっさと女の子を引き連れ夜の街へ消えたしブラックとピンクは未成年なのでさっさと帰した。

 イエローは相変わらずいつ見てもカレーしか黙々と食べてないし。

 司令部の女の子はレッドにほとんど取られたのでそのことで司令部の男共は俺に愚痴るし。


 ストレスが溜まって仕方ない。

 俺は酒を飲むことしかできなかった。

 そして神野は酒が飲めないと言うのでちょっとこいつが酔ったらどうなんだ?と言う興味で酒を飲ませたらこれだ。

 一気に俺は酔いが覚め、こいつを送る羽目になった。


「大丈夫か蒼ちゃん…」

 背中をさすりながらタクシーを呼ぶ。


「…隆…俺は…もうダメだ…。酒に毒が入っていたみたいだ…。この店は悪の組織の手が伸びていたのだ!」


「いやちげえ…!単にお前が酒に弱かっただけだ」

 まぁ飲ませたの俺だけど。


 タクシーが来てブルーの家に向かう。


「はあはあ気持ち悪い…。全身に毒が回った!後数時間で俺は死ぬ!遺言を書かねば!」

 だから死なねーっての!運転手さんがなんか誤解してんだろ!

 違いますよ!酔って気持ち悪いだけだからこいつ!!


 ようやくブルーの家に着く。

 ブルーの家は一見普通の一軒家だ。


「おい蒼太郎!鍵!」


「貴様…この鍵で地獄への扉を開くと言うのかっ?その覚悟が貴様にあるのか見届けてや…ろう」


「はいはい…わかったから…。地獄でも何でも開いてやるよ」


「ふっ…それでこそヒーローグリーンだ…。俺たちをサポートし、ある意味特攻し自ら真っ先に死んでいく…ああ、あいつすげえいい奴だったよ…って言われる…」


「それ完全に使い捨ての駒じゃん!何?お前らそんな目で俺を見てんの?なんかあったら真っ先に死んでもかまわない位置なんかい俺は??」


「グリーンは古来から残念な色というのが決まっている…。お前がグリーンに決まった瞬間から残念な奴でしかないんだよ…」


「あ、お前何久しぶりにまともなこと言ってんの?ていうか腹立つわ!色で優劣つけられたくないわ!!」

 と俺は鍵を開けた。


 するとそこに一匹の猫が待っていた。

 主人の帰りに反応して玄関まで出てきたのだ。

 しかし…壁は所々猫の爪でボロボロのガリガリだった。


「ふっ…帰ったぞ、我がしもべ心愛よ」


「ふーん、ココアちゃんか、確かに茶色で可愛いな」

 すると蒼太郎は俺の首を絞め、


「貴様!グリーンごときが心愛に気安く話すんじゃない!!お前は心愛様と呼べええええ!!」


「ぐ…ぐるしい!!」

 こんな奴送るんじゃなかった!!俺は猫以下なのか!


 ようやく落ち着いた蒼太郎はココアちゃんを膝に乗せ


「で?何しに我が家に来たんだ隆?まさか俺の秘密を暴きにか?」


「酒に酔ったお前を送ってきたんだろうが!!感謝しろバカ!」

 蒼太郎の家は案外普通だった。猫グッズなどが至る所にあるだけで。

 結構掃除も綺麗にしているし空気清浄機や自動餌やり機や自動で猫トイレを掃除してくれる機械、キャットタワーも充実。

 愛猫家だった。


「なぁ蒼太郎…お前…結婚とかしないのか?」

 蒼太郎は頭は痛い奴だが根本はいい奴なんだろう。

 レッドには劣るが普通にしていれば結構クールに見られるタイプだからな。


「結婚?何を言うんだ隆…俺に女など必要ない!心愛がいれば俺の心は満たされる!それ以上何が必要なんだ?」


「いやただの寂しい奴じゃねーか!」


「お前こそ魂のない小さき人形に話しかける姿は不気味でしかない!現実を見ろ!隆!」


「うがあああ!黙れええええ!俺の嫁を侮辱すんじゃねぇよ!!」

 その時ココアちゃんがガブリと俺の手を噛んだ。


「心愛も目を覚ませと言っている、後大声を出すなうるさい」


「すいません……」


「まぁ夜も遅いし泊まって行くか?」


「え?いいの?」

 何だよ…案外いい奴じゃないか蒼太郎!こんなことなら暁雄なんかほっといて蒼太郎と仲良くしとけば良かったよ。


「じゃあお前の寝床だが…これを使え…」

 と勧められたのがちょっと大きな猫用のゲージでギリギリ人が入れる大きさだ。


「は?」


「だから泊めてやると言ってるんだ…。そうだな…雄だからトイレは外でしてきなさい、餌はちゃんと高級缶詰めだ」


「………」

 俺は無言で玄関に向かった。俺には友達なんかいらない…。帰ろう…俺の嫁たちが待つ家に!


 そして新しく借りた部屋に帰るとゴウゴウと燃え盛り真っ黒な煙が出ていた。


「あ、若竹さん!!無事でしたか!なんかまた放火みたいですよ!!住民は全員無事でしたが!!」

 と警官が駆け寄ってきた。


 無事じゃねぇよ…。


「俺の嫁たちがああああっ!!」

 一体俺が何したって言うんだよぉ!

 俺はこの後イエローの家に行ってカレー食って寝た。

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