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第51話 12月のある日

「はあああああっ」

 と寒くなった学校の屋上へと続く階段でホットココアの缶とコーンポタージュの缶を持って枝利香さんが青くなりため息を吐いた。


「どうしたの?寒いの?」

 すると枝利香さんは


「そりゃ12月だぜ?もう…」

 そう季節はもう12月に入り街はクリスマス一色になっている。飾りは11月からだけどね。ハロウィン終わったらすぐクリスマスに切り替わるからね。


 私と枝利香さんはスカートの下に学校のジャージを履いている。女子校ではほとんどの女子は冬これであるが一部の彼氏持ちの輝き女子は黒タイツで可愛く決めている…。

 流石に下校時は脱いで帰る女子も多かった。通学路で出逢いを期待している女子が多い。


「どうも高志が何か隠してやがんだ…金もかーちゃんの財布から小銭くすねたりして…もしかして誰かにカツアゲされてんのかもしんねぇ…何度問い詰めてもあたしじゃ口割らねぇし」

 とチラリと私を見る。

 え?まさか私に高志くんを説得しろってこと?えええ?無理無理無理無理!


 高志くんは中二の枝利香さんの弟で舞川家に世話になった時はよく雪姉と言われてたっけ。顔は少し枝利香さんに似て怖いけど基本的に優しいところもある。


「反抗期かもしれないしれないよ?」

 と言うと


「あいつは年中反抗期みたいなもんだよ…なぁ、時奈…高志に聞いてくんねーか?あたしじゃ奴の心は開けねぇ!頼む!」

 とお願いされてしまった。

 しかし友達の頼み断れず!ちょうど電気ストーブも欲しかったし運んでもらうか…。


 そんなわけで日曜日に高志くんを引き連れ家電屋にやってきた。


「高志くん!安いやつを!省エネであんまり電気代かからないやつを!予算は5千円内で!検討を祈るよ!」


「了解した雪姉!任せとけ!俺が安くていいやつ探してくるから待ってろ!」

 と高志くんが探してきたのは5千円内で買えるカーボンヒーターだ。遠赤外線で身体の内側から温めてくれるものだ。流石に部屋全体は暖まらないけど。一酸化中毒の危険もなく換気は必要ない。乾燥も少なく電気代も抑えられスリムでコンパクトの為私一人なら充分だ!


「君に決めた!!」


「ポ●●ンかよ…」

 と突っ込まれたが早く買わないと在庫が無くなりそうだ。

 早速ストーブを買い、アパートまで運んでもらう途中で高志くんが


「なぁ雪姉…俺どうしても家族に言えなくて…でも雪姉になら…言えるかもしんない…」

 来た!悩み相談!!


「なぁに?何でも言っていいのよ?」


「…付いてきて…」

 と高志くんは繁華街の方へ行く。

 あっ!ちょっと怪しい店の並ぶビルの隙間に入ってく!高志くん?まさか年齢を偽っていやらしいバイトを?そりゃ高志くんならホストでもギリギリいけるかもしれないけど…目つき怖いけど。


 しかしダンボールに入った小さな猫を見て一瞬でもそんなことを考えた自分にビンタした。


(馬鹿野郎ー!猫じゃん!猫の為じゃん!いい子だよこの子!)

 聞けば少しずつ食料を与えてここでひっそり飼ってるようだ。でもどうしても家では買えない。団地アパートだしね。

 餌台が欲しくてお金をくすねたようだ。良かった。カツアゲじゃなくて。


「雪姉…うちじゃ飼えない!飼ってやってよ!こいつこんな寒さで死んじゃうよ!」

 ええーっ!?何故私が!

 猫なんて飼ったら追い出される!こっちが寒空で死にそうになるわ!


「高志くん…無理だよ…うちもボロアパートだし…」


「そっか…だよな…無理言ってごめん…」

 と、その時、


「やっ…やっぱりわ、私は…」

 と声がして

 それに高志くんは反応して走った。ええ?ストーブと猫はどうなるの?

 迷って私はストーブと猫を置いて追いかけたら高志くんがリーマン男性に一人の女の子がいかがわしい店に連れてかれそうになるのを必死で止めていた。


「なんだガキ?どけっ!」


「おっさん!いい大人が中学生に何しようとしてんだ!」


「なっ!中学生だと?高校生じゃなかったのか!」

 確かにその子は可愛くて発育がいい。私より胸デカイ。いいな最近の中学生。

 おっさんは唾を吐き捨て帰ってく。


「大丈夫?佐々木さん!」

 とカッコ良く助けた高志くんだが、


「ちっ!余計なことを!あのおっさん騙してお金取ろうとしたのに!余計なことを!」

 と人が変わったようになった。


「佐々木さん…?」


「舞川くん!それともあんたがお金くれるの?ま、無理か!あんたん家貧乏で有名だしね!こんなのあたしの友達じゃ皆してるよ!お小遣い今月ピンチだったし…」


「何言ってんの…一歩間違えば危険な目に…」


「おっさんがシャワー浴びてる隙に出ればいいの!全くいい鴨だったのに!」

 ひいっ!なんて子だ!見た目だけ可愛い中身守銭奴な子じゃん!

 そこでその子の頭をバシンと竹刀が打った。


「ぎゃっ!!」

 と女の子は頭を抑えてうずくまった。

 枝利香さんが物陰から出てきた。


「姉…」

 と言おうとして高志くんもバシンと叩かれた!


「いって…何すんだ!暴力姉!」


「お前…女見る目ないなぁ…。あんたも…もうこんなことやめな!流行ってるかしんねーけどよ、犯罪だろ人の金くすねるなんて…」


「あ…」

 高志くんはバツの悪そうな顔になる。自分も餌代にくすねてたもんね。


「うっせーな!ババア!自分はその断崖絶壁じゃ男が引っかからないからってピチピチのあたしに八つ当たりご苦労様ー!」

 なっ!とんだ子だ!なんてことを言うんだ!殺されるよ?


 バシン!!


 しかしそれに怒って竹刀でその子の尻を叩いたのは……


「なっ、痛ったあ!!」


「幻滅したわ…俺やっぱ見る目なかったな…」

 高志くんだった!


「ふん!馬鹿!あんたみたいな怖いの誰も近寄らないし!覚えてなさい!」

 と捨て台詞を残し女の子は逃げた。


「高志…ようやく判ったか…」


「姉ちゃん…ごめん…判ったよ…女は真っ平らな胸の子が一番だって…」


「「いや!そこじゃねーよっっっ!!!」」

 と二人で突っ込んだ。


 それから子猫は枝利香さんが飼っていいと許可した。隠れて飼ってしつけたら大丈夫だろって。元々ボロボロな団地だし、住民も猫好きが多かったから皆で交代で団地内で飼うことにしたんだって。

 今じゃ団地の看板猫となり子猫はすくすく元気になったみたい。


 気付けばクリスマス近くになっていた。街にはカップルが多い。クソ!あいつらの上に隕石落ちないかな。

 私はバイトを終えて日課を済ませ寒い部屋に帰った。

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