正直最大のライバルだと思っていた
(あいつは手強いからな)
早いところ羽理の左手薬指に自分のものだという分かりやすい
実際問題「俺の!」と主張することはすぐには叶わないにせよ、とりあえずはそうやって〝
(そうしとかねぇと気が気じゃねぇからな、俺が!)
それにはまず――。
***
「なぁ
フライパンにたっぷりのバターを溶かして塩コショウで下味をつけた卵液を流し込みながら、
卵が熱で固まらないうち、六枚切り食パンを卵液に浸して素早く裏返しつつチラリと羽理を見遣ったら「挨拶……ですか?」と、こちらの真意が分かっているんだかいないんだか、判断のつかない
「うちの親たちには会っただろ? 次はお前の親御さんだと思うんだ」
食パンの上に蕩けるスライスチーズを乗っけて、そこへケチャップを手早く塗り込むと少量の蜂蜜をタラリと回し掛ける。
バターの焼ける香ばしいかおりを漂わせるフライパン上で、ジューッといい音がしているのを見詰めながら、
「うち、
「結婚の挨拶しに行くのに距離は関係ないだろ」
フライ返しで食パンの周りに広がった卵を、パンを包み込むように折り畳みながら問い掛けたら、羽理が「いいんですか?」と小首を
「いや、いいも何も……そこすっ飛ばしてお前を嫁に貰うわけにはいかねぇし……何より同棲の許しも取り付けたいんだよ、俺は」
焼けたものを二つ折りにして皿へ載せると、付け合わせにミニトマトとキュウリをトッピングする。
同じものを手早くもうひとつ作ってから、ナイフとフォーク、それから果汁一〇〇%のオレンジジュースを注いだグラスと一緒にトレイへ載せて羽理の元へ行けば、羽理が目をキラキラと輝かせた。
「お待ちどおさま」
「いつものことながら至れり尽くせりですね」
「俺と一緒に住めば毎日朝昼晩、美味いモン食わしてやるぞ」
もちろん、今日会社で羽理が食べられるよう、弁当だってしっかり作ってある。
羽理が自分と一緒にいることで感じる付加価値は、多ければ多いほどいい。
「きゃー、太っちゃいそうでちょっと怖いですっ」
言いながらもとても嬉しげ。「いただきます」と、いそいそと手を合わせる羽理に、
「ま、その分
クスクス笑いながら言ったら、羽理が手にしていたミニトマトをポロリと皿の上へ落とした。
「せめて……週末限定でお願いしますっ」
真っ赤になってモニョモニョ言う
「で、冗談はさておき、さっきの話なんだがな」
何だかんだで中途半端に
「うち、元々父親不在の母子家庭なんですけど……その、問題ありませんか?」
自分が婚外子なことを気にしているんだろう。今更なことを言って不安そうに瞳を揺らせる羽理に、
「俺としちゃあ、挨拶出来るお母様がご健在なだけで有難ぇんだけど?」
世の中には家族との縁に恵まれない人間なんてざらにいるのだ。
たまたま
「羽理はおふくろさんとの仲……」
「悪くないと思います」
おじい様はもう鬼籍に入ってしまっているらしいのだが、それを機におばあ様と同居を始めた羽理の母親は、ペットOKな住まいに移り住めたのをいいことに、猫を飼い始めたのだとか。
「実家に帰るたび、毛皮の猫吸いしまくってます」
「毛皮の猫吸い?」
頓珍漢なワードに
「あ、『毛皮』は猫の名前なんですけどね、その子のお腹とかに顔を埋めてスンスンにおいを嗅ぐんです」
羽理が嬉しそうに説明をしてくれた。
ちなみにそんな羽理一番のおススメは、肉球の香りらしい。
「何ていうんですかね。なんとも言えない香ばしいにおいがするんですよ♪」
その香りを思い出したのか、うっとりする羽理を横目に、
確かに言われてみれば、自分もウリちゃんの肉球の香りは嫌いじゃないなと思いつつ。(あの匂いは例えるならポップコーンかな?)とか考えていたら、「おかきとかお
(おかきや煎餅か。なら多分俺も嫌いじゃないな)
そこでふと、すぐ横に大人しくお座りしている愛犬キュウリに視線を移すと、愛らしく小首を
(ウリちゃんの肉球のかおりが一番でちゅからね!?)
愛娘のあざとい仕草に心臓を撃ち抜かれつつ、
「じゃあ近いうち、お前の実家へ猫吸いしに行くか」
と提案した
その時は、ウリちゃんは