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チェーンメール
チェーンメール
響生
ホラー怪談
2025年05月17日
公開日
2,110字
完結済
あるメールが送られてから、少しずつ、ゆっくり、確実に日常が蝕ままれていく…。 それは決して「あり得ない話」ではない、そんな話。

第一夜 チェーンメール

昔から日常的に、小さな子供から大人まで使用されている携帯電話。

普段私たちはそれらの機械を利用し連絡したい相手に電話をしたり、一昔前はメール、今ではラインやDM等で日々相手と会話をしていることだろう。

そんな中で一度は聞いたことがあるのではないだろうか。

「チェーンメール」

今から話すことは作り話。虚構。フィクションであるが、決して絶対に起こり得ない話でもない。


それは私のスマホに送られてきた、一通のラインから始まった。

私はただのどこにでもいる女子高校生。流行り物もそれなりに関心があって、友人にも恵まれ、今日までそれなりに幸せを感じながら生きてきた。そんな時に来た、メール。

メールの内容はこうだ。


「最後まで見てください。


回ってきてしまいましたね。


見てしまいましたね。


私ね、好きな人がいたの。


どうしても付き合いたい人がいたの。


でもどうしていいかわからない。


誰にも相談できない。


彼はいつも人気者。いつもグループの中心にいる。


私には眩しすぎる人。


どうやったらその眩しい人を私のものに出来るのかずっと考えてたの。


そしたらね、思いついたの。


彼の周りにいる人たちをコロセバイインダ。


そうすれば、彼の周りには、ワタシしかイない。


彼は人気モノだかラ、きっトこれかラも彼のことをスキニナル人が出てクる。


きっト、アナタモソウダヨネ。


でも、それだけでコロサレルなんて、可哀想だから、ルールをつけルね。


この文章を今から15分以内に20人に送っタら、あなたのコトは、ミノガしてあげル。


そレじゃあ、すタート。」


…全く意味がわからない。

今時こんな古臭いメールがくるなんて。

昔チェーンメールってゆうのが凄く有名で、それが本当か嘘か、誰かに回さないと、回ってきた人に不幸が訪れる…そんなバカみたいな噂が広まっていた時代があったことは知っている。

でもそれはもう何年…もしかしたら10年以上前のことかもしれない。

なにせ、私は今の今までその事柄すら思い出すことなんてなかったんだから。

改めて見てもこんなのを鵜呑みにする人が今でもいるのかと不思議に思う。


私はそのメールを特に気にかけることなく、ただ削除をして、すぐにそのメールの存在なんて忘れた。

それが間違いだったのかもしれない。

その時誰かに相談とかしたら、もしかしたら未来は変わっていたのかな。

今となっては、もう後悔しても遅いが…。


その時から私の日常が少しづつ壊れていく音がした。

最初は些細な違和感。

学校で友達と談笑している時に少し視線を感じる。それはまだ良い。うちの学校はまあまあ生徒数が多く、誰か私に話しかけたくて様子を伺っている…私は軽くそんなふうに考えていた。

でもその頻度はどんどん多くなっていった。

帰り道、視線だけでなく誰かに追われている感覚。

それが自宅に到着するまでずっと…それが一週間続いた。

その後、次は私の名前を呼ぶような声がした。

それも学校の中で。最初に感じていた視線も今度はあからさまにこちらを見ている感覚。

まるで重たい泥のようなものが体に少しづつ貼り付いて動けなくなるような…。

それとあわせて、名前を呼ばれた。

友達と喋っている時に。

でも誰も聞こえていない様子。

私にしか聞こえない声。

その事実にひどく狼狽えていると友達からはとても心配をされた。

相談なんか出来る筈がない。言っても信じてもらえない。私はそう思ってしまった。


それからは言いようのない不安感が体の自由を、精神の自由を、思考の自由をゆっくりと、確実に制限されていき私は家の外に出るのが怖くなってしまった。

学校が怖い…またあの声が聞こえたら、きっと今の私は途端に発狂し狂ったように喚き散らすに違いない。


そうやって自室でガタガタと震えながら毛布にくるまっていると、またあの気持ち悪い視線を感じる。

ねっとりとした、それも学校で感じた視線よりももっと近い距離からの視線…。

毛布の外から、私のことを「それ」は見ている。

雰囲気でニタニタと笑みを浮かべているのがわかる。

そうして私は今この瞬間に、今の今まで忘れていたこの前のメールのことを思い出した。

思い出すと同時に言いようのない怒りが湧き上がった。

『彼は人気者だから、きっとあなたも好きになる』?

冗談じゃない…そんな誰かもわからない人間を好きになると勝手に思われて、その挙句に殺される?

あまりにも理不尽。あまりにも身勝手。

怒りが私の中で膨らみ、精神も限界だったのだろう。

勢いよく毛布から出て私は視線の主に怒りをぶつけようとした。


同時に、「それ」を見た。

同時に私の視界はテレビの電源が消えるようにブツッと消えた。


シーン…と静まり返った部屋。部屋の中で誰も操作していないスマホが独りでに光った。

その画面には、あの削除したメールが表示されている。

そうして、そのメールは次の誰かに転送されていた。


誰かの思い、誰かの意思が、長い年月を経て、それが形となり、具現化し、意志を持った生き物のように動く。

嘘のような、信じるに値しない虚構の話ですが、意外とそのような話はバカになりません。

もしかしたら、私たちの周囲でも、そのような事象が起こっている…はたまた、今まさにそのような事象が生まれ落ちようとしているやもしれません。

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