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イカロスの探求者
イカロスの探求者
多田羅和成
SFポストアポカリプス
2025年05月22日
公開日
2.1万字
連載中
この土地はいつでも闇が支配している。獣と鉄の悪魔に怯える人々は絶望の世界で死を待つのみであった。その中現れたのは火神 イグニスであった。イグニスは各村に神の箱と火を与えた。人々はイグニスの加護により獣と鉄の悪魔に抵抗し得る力を得たのである。 それから幾つかの月日が経った。少年ルフは変わらない日々に退屈していた。インノ祭に捧げる獣を探していると鉄の悪魔がルフを襲う。そんな中ケラー教を崇める異教徒アランがルフを助けた。アランのことをもっと知りたいと思ったルフは毎日会いに行く。 アランは知らないことをルフに教えてくれて次第に意気投合をする。そして、イグニス教では重要な神の箱を案内することになる。神の箱にある洞窟では緑髪をした神の使者と村の村長ベル・ウィークスがいた。ベルが引き返すようにいうと、壁一面が青くなり丸くて明るいものが浮かんでいる。 戸惑うを隠せない三人は何だとなっていると、神の使者が「太陽」だと答えた。太陽の神秘的な姿に衝撃を受けたルフ達はまだ見ぬ太陽を探しに冒険へと出るのである。 出会いと別れを繰り返し、夜だけの世界で彼らは何を得るのだろう。

第1話 イグニスの邂逅

 世界には闇しか存在しない。凍て付く寒さと暗がりの中で鉄の悪魔と獣の軍勢に人々は成す術がなく、蹂躙されるしかなかった。


 絶望に打ちひしがれていると、一筋の赤い光が空から降り注ぐ。赤き光はこう告げた。


「我、イグニス。汝に希望を授けん」


 イグニスは各村の近くに神の箱を置き、火を授けた。


 火は氷のような寒さと先も見えない暗闇を照らす希望に、神の箱はモイラという神の加護を授け、鉄の悪魔と獣に打ち勝つ力をもたらした。


 人々はのちにイグニスを神として崇め、感謝の思いを彼を語り継ぐのであった。


「今日はインノ祭じゃ。皆よ、無事に帰るんじゃぞ」


 村長らしき男が祭壇の上で村の男に話しかける。男達はその問いに答えるように声をあげた。


 そんな中つまらなさそうにしている少年が一人。白くハーフアップバンクの髪に切れ長一重の淡い色合いの水色。幼くも男だと分かる顔立ちからはやる気が見受けられない。


 周りの男達はぞろぞろと獲物を得るために村の外へと出ていく。未だ出ていこうとしない少年に対して近づく影が一つ。


「ルフ! なにしているのよ! もう皆行っちゃうわよ!」


 ルフと呼ばれた少年はめんどくさそうに後ろにいる少女の方を向く。


 少女は炎を思わせる赤い髪を二つにくくり、レモンイエローの目は未だ行かないルフを睨みつけている。


 睨み付けられてたまったものじゃないとばかりにルフは肩をくすめる。


「そんな顔をしなくても行くよベル。さぼったら怒られてしまうし」


「当たり前でしょ。今日はインノ祭。イグニス神へ祈りを捧げる日なのだから。ほら、頑張ってらっしゃい」


 ベルが力強くルフの背中を叩けば、ルフは痛そうに背中をさすりゆっくりとした動きで大人達の後をついていく。


 その姿にベルはイグニス神に祈りを捧げ自分が行かねばいけない場所へと向かって行った。

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