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第8話

「なぁ、太陽探しに行こう」


「えっ! な、なに言ってるのルフ!」


「オレは行く場所がないから構わんぞ」


「アンタは黙ってなさいよ!」


 ルフの突然の提案に声を荒げるベルに対して、アランが肯定するものだからベルはアランを軽く叩いたのちにルフと向き合う。


「太陽があるかも分からないのよ? この広い世界を彷徨って見つからない可能性の方が高いのよ? 村にいた方が安全よ」


「確かに生涯賭けても見つからないかもしれない。村にいた方が安全だと思う。でも、俺の心が叫んでいるんだ! この未知の恒星を見つけたい。探求したいって。勿論、ベルが嫌なら来なくていい。ただ俺は行く」


 真っすぐで壁に照らされた空の映像のように迷いなく見つめるルフの瞳に、ベルは心を揺さぶられた。


 もしも、この世界に太陽があれば果てしない闇に怯えずに済むだろう。この光景を知るのは自分達と神の使者だけだ。


 ベルは自分の手をぎゅっと力強く握りしめた。


「分かったわよ! 止めはしないわ。ただし、アタイも連れて行きなさい! アンタ達だけじゃ直ぐに危険な目に合うだろうし、ルフは文字書けないからね」


「ありがとうベル!」


「お、幼馴染として当然だわ」


 嬉しさのあまりルフがベルを抱きしめると、ベルは顔を赤くして幼馴染だからと繰り返す。


 そんな光景を見た後、アランは神の箱に近づくとケラー教が使っている文字が書かれていることに気がづく。


「アポストルス?」


 何故イグニス教で使われている神の箱にケラー教が使う文字が使われているのか。


 まさかケラー教にも神の箱は関わりがあるのかと考えているとルフから呼びかけられた。


「もうそろそろ行こう。ベルがバレたらまずいって言ってる」


「あっ、あぁ、そうだな。行こう」


 疑問は一時置いておき、出口に向かってく。その三人を見送る神の使者は優しく微笑みながら手を振っていた。


「いってらっしゃいませ。マニュス族の方々」


 神の使者が目を閉じると映像も途絶えた。誰もいなくなった空間では確実に歯車が廻り始めていた。


「で、これから何処向いていくのよ」


「とりあえず北向いていかない?」


「そうだな。どうせ先は長いし」


 こうしてルフ、アラン、ベルは果てしない夜の世界で未知の恒星太陽を探す旅に出た。


 三人の未来に待ち受けるのは希望の太陽か。それとも暗く閉ざされた絶望か。それは神すらも知らない物語である。

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