「あの……おじさん」
「何だ茉莉花」
「……やっぱいい」
「はあ?お前さっきもなんか言いかけて止めただろ。怒らないから言ってみ」
ほらほら、と春也が茉莉花を煽ってくる。ワインレッドの革のジャケットの中に着た暗い赤色のシャツの袖から手がのぞく。右腕は肘あたりまで出ていて目玉のような模様の不気味な
「おじさん……あれ、知ってる?柘榴村ってやつ」
「あー、あれか。最近流行ってるっていうVRホラーゲームだろ?茉莉花もしかしてやってんの?」
茉莉花は頷く。春也は「ほう、昔っからお化け屋敷も入れないくらい怖がりなくせに珍しいな」と言ってにやりと笑う。
「別にいいじゃん。気になったんだし。そういう伯父さんは?」
「俺もまあ一応、ユーザー登録だけしたけどそれっきりだな。面白いのかそれ?」
春也がフォークで焼きたてのハンバーグを一切れほおばる。茉莉花は再び頷いた。
「へえ。で、何か困ったことがあるんだろ。でなきゃ俺になんて連絡してこないもんなあ。ほら、言ってみ」
春也が茉莉花の頭の中を見透かしたかのように言った。茉莉花は観念して自分に数日前に起きたことをありのまま隠さずに話すと、春也は「ふうん」と興味なさそうに頷いただけだった。
「ようするにゲームの中でお前がうっかり壊した祠が現実でも見えるって、こういうことだな?」「うん」
「それ……いつも見えてんのか?」
「ずっとじゃなくてたまに。1人でいる時にいつの間にかあるかんじ」