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「なーんだ……お前だったのか……」


  和也だったって事に安堵する望。


「そりゃ、ないだろ……」


  和也はそう軽く望に突っ込みを入れると、望へと近付き、


「ほら、上着持って来てやったぜ」


 和也はそう言いながら望がいつも着ているコートを投げ渡す。


 二人の関係はそういう関係だ。


 多分、二人の年が近いからというのもあるのだが、もう一つの理由はきっと医者と看護師がコンビを組んで同じ部屋にいるからなのかもしれない。


「あ、おう! サンキュー! 丁度、寒いと思っていた所だったから助かったぜ」

「……ったく、こんな所でシャツ一枚でいたら風邪引いちまうぜ。医者が風邪引いたら洒落になんないだろ?」


  そう明るく言う和也に望は微笑む。きっと和也の行動や言葉がそうさせてくれているのであろう。そんな笑顔の和也に今まで悩んでいた事が嘘みたいに吹き飛んでしまいそうだ。


「そう言えばさ、望がここに来るって事は……何かあった時って事だろ?  しかもたまにしか煙草を吸いにここに来なかった筈だよな? 確か、今日はそんな患者さんはいなかったような気がしたんだけど? じゃあ、望はなんでここに来たんだ?」


  和也は数年、望と一緒にいるからなのか、望の性格、行動を良く分かっているという事だろう。本当に望がここに来る理由というのは和也の言う通り何か患者さんにあった時にしか来なかった。しかし和也はそんな事をわざと望に聞いているのか話の流れでそう言ってしまったのかは分からないのだけど気付いた時には望にそう聞くのだ。そしてその和也の言葉に顔を真っ赤にする望。そして望は一つため息を吐くと、


「やっぱ、流石だよな。長く俺といるだけあるみたいだよな、俺の行動はバレバレって訳だ」

「まぁねぇ……で、何があったんだ? もし、あれなら、俺が相談に乗ってやってもいいぜ」

「別に……相談するような事じゃねぇよ」

「じゃあ、俺の勘違いだったのかな? もしかして、この前、入院してきた桜井さんの事なんじゃないかな? って思ったんだけどなぁ」


  和也は望の方に顔を向けずにフェンスの向こう側に見える夕日を見ながら語り始める。多分、和也の場合には確信犯だ。だって雄介が望に告白しているのを聞いているのだから。望はその和也の言葉に大きなため息を吐く。そして諦めたかのように、


「はぁ……和也の言う通りだよ。 何かあったってのはマジな話だしな」

「……で、何があったんだ?」

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