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 望の方も雄介を見送った後、部屋に戻ってくる。


 そして、部屋に戻ると大きなため息をつく。何をするわけでもなく、ただぼんやりとしている望。


 その後、部屋に入ってきた和也。


「やっぱ、アイツが退院しちまったのがそんなに嫌だったのか?」


 そんなことを言う和也は無神経なのか、そう嫌味を言いながら二人が使っている部屋に入ってくる。完全に二人きりになれたということをいいことに、ここぞとばかりに望に近づいていくようにも思える。


 そして和也は望の肩に腕を回すが、それはすぐに望によって払いのけられてしまう。


「そんなわけねぇだろ? ってか、何だお前!  そろそろいい加減にしてくれねぇかな!?」


 どうやら望は雄介に告白の返事ができなくてイライラしているのか、それともそんな風に望のことを逆なでるかのように言ってくる和也にイライラしているのか分からないが、そんな風に返す。


「俺はただ単に……望に元気がないから声をかけて上げてるだけなんだけどな。ってさ、そんなに怒る必要はねぇんじゃねぇのか?」

「ってかさ、前から言おうと思ってたんだけどよ。奴が絡むとなんか邪魔しに来てなかったか? だから、俺が……アイツに……告白……あ、いや……な、何でもねぇ……」


 最終的に望は言葉を詰まらせ、急に立ち上がって和也のことを睨み上げるだけになってしまっていた。


 そんな望の行動に、和也はひと息吐いて、


「別に……俺は普通のことをしてただけだし、普通に仕事をしてただけだろ? そこに異常に反応していたのは望なんじゃねぇのか?  それに、俺は本当に普通に仕事をこなしてただけだからな!」


 こんな風に二人がここまで喧嘩になったことはない。


 そんな二人の怒鳴り声が部屋内に響き渡る。


 そんな和也にもう返す言葉がなくなったのか、望は大人しく椅子に腰を下ろすと、完全に和也のことを無視し、再びパソコンに向かう。そして和也は捨て台詞のように望に向かって、


「アイツがいなくなったからって、俺に当たってんじゃねぇよ……!」


 と言ってしまっていた。望の方はその言葉を無視し、そこからの二人の関係は悪くなっていくだけだった。


 それがきっかけで和也と望の関係は崩れてしまったのか、それともこの一件でこれ以上一緒に仕事ができないと思ったのか、そういったことは不明なのだが、望は不在の院長に電話をかけ、和也とのコンビ解消を告げる。あんなに仲が良かった二人の間に桜井のことでひびが入り口も聞けないほどになってしまったのだから、仕事にも支障が出るだろう。


 しばらくの間、望は別の看護師さんと、和也の方も別の医者とコンビを組んで仕事をすることになり、二人は離れた生活を送っていた。

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