そして、望は和也のことを呼び寄せ、誰にもこの話が漏れないようにと急いで自分たちの部屋に向かった。
「確かさ……お前の友達に刑事さんがいたよな?」
部屋にある自分の椅子に座り、和也のことを見上げながら話を始める望。しかし、和也は望のその言葉に急に眉を吊り上げ、
「え? あ、いるけど……でも、いきなり何でだよ。 いきなり過ぎて俺には意味が分からないんだけど……?」
「あ、ああ……でも、とりあえず訳は後で説明する。とりあえず、今、桜井さんは誰かに命を狙われてるみたいなんだよな」
そう言うと、望は先程拾った手紙を和也にも見せ、和也はその手紙に目を通すのだ。
「そういう事か……」
和也は手紙を見ても全くもって他人事のようだ。そんな和也に対し、望は、
「あのさぁ、この手紙を読んでお前は何も思わないのか?」
と問う。
「まぁ、少なくとも俺には関係のない事だろ? とりあえず、まぁ、桜井さんは何かこう知り合いみたいな存在になってきてるとは思うんだけどさ。それに、この手紙があったって俺たちには何もできないだろう? 俺たちはお巡りさんでも刑事でもないんだからさ。それに、俺たちはその犯人を捕まえる事もできないんだし」
「それは分かってる。でも、確か前に話していた時にお前言ってたよな? 知り合いに刑事さんがいるんだって。だから、その人に頼んで犯人を見つけて欲しいんだよっ! 和也の言う通り俺たちはこの犯人を捕まえる事はできないけど、命を助けるって事はできるだろ? まぁ、後は病院内で事が起こされたなら、どうにかなりそうなんだけどさ。問題は雄介が退院した後なんだよな。また、雄介は命を狙われて、再び病院に戻って来るとも限らない訳だし。だから、雄介が、その犯人に狙われる前に犯人を捕まえた方がいいんじゃないかって思ってるんだけど」
「まぁ、確かにそうだとは思うんだけどよ」
それでも和也はどうやら望の頼みでもそこは難しいようだ。だって今の和也にとっては全くもって関係のない事なのだから。しかも和也の方はその事について腕を組んでまで考えてしまっている。
「やっぱり、無理だ! いくら望の頼みでもな。 悪ぃ……今の話はなかった事にしてくれねぇか? ホントに本当に俺がアイツに頼むのは無理なんだからよ」
この様子だと、その和也の友達の刑事とは和也と何かあったのか、頑固として望の頼みを譲ってくれないようだ。
「マジで頼むっ!」
それでも望は和也に向かって手を合わせ頭まで下げてお願いをするのだが、和也の方は未だにいい顔をせず、挙句ため息を吐いてしまっていた。
本当に今の和也はどういった意味でそんな表情をし、望に断り続けているのであろうか。 まだ、そこは分からない所だ。
そして、その時、急に和也は今までの険しい表情から一変し、今度は何か思いついたような表情を浮かべ、急に顔を上げ、
「なら、いいぜ……。 俺の友達の刑事にその事頼んでやるよ。その代わり、望の事、抱かせてくれたならいいかな?」