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 望はその話の中心部へ向かい、話していたのは雄介の治療をしていた医師と何故か刑事の姿だった。


「何があったんだ?」


 望は新人医師に声をかけると、


「あ! 吉良先生、実はですね……今ここに来ているのは警察の方でして、今回の事件について被害者に聞きたい事があるそうなんですよ。でも、患者さんは未だに意識が回復してませんし、まだまだ話せる状況ではないので今日の所は話する事ができませんよ。と申し上げているのですが……」


 新人医師は望の白衣の裾を引っ張って引き寄せるように望の耳側で話をしてくる。


「ああ、分かった……まぁ、俺が刑事さんにはそう言っておくからさ」

「ありがとうございます」


 望は警察の方に体を向けると、患者さんの方はまだ回復していないことを話し、明日以降来てくれと話すと、警察の方はその場をやっと去って行ってくれたようだ。


「とりあえず、明日また来るってさーって、言ってたぜ。 って、事でさ、この患者さんは俺の知り合いだから中に入ってもいいだろ?」

「はい、吉良先生なら構いませんよ」


 新人医師に承諾を得ると、望はやっと雄介に会えることができたようだ。


「あのさ……一つ聞きたい事があるんだけど……。この患者さんが腹部に怪我してきた理由聞いたか?」


 未だに生命維持装置が付けられている雄介の側に行くと、その辺にあった椅子を持って来て望はそこへ座り、さりげなく雄介の体に触れるのだ。


「それはさっきの刑事さん達が言っていましたよ」

「それで……? って……あ! そうか! 刑事さんが来ていたって事は桜井さんは何かこう事件に巻き込まれたって事なのか!?……え? ってことは……あ、そうだったのか……そうか……桜井さんはこの話のけりを付けに行ったって事になるのか……」


 最初の方は新人医師の言葉に納得していたようなのだが、最後の方は一人呟くように言うのだ。


 その望の言葉に新人医師はきっと頭にハテナマークを浮かばせているのかもしれない。 現に首を傾げてしまっているのだから。

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