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「ああ、だから早く治せよ。それに今度からは、身近に怪我をすれば心配してくれる人がいるんだってこと忘れるんじゃねぇぞ」


 望の中ではそんなこと、普通なら照れ臭くて言えないことなのかもしれないのだが、告白の返事なのだから、相手に誠意が伝わるように頑張って言ってみたようだ。


「あ、ああ……せやな……。先生の言う通り、早く治すな。ホンマ、これからは怪我に気を付けるようにするわぁ」

「先生って言うなよ。今、俺達の関係っていうのはさ、恋人っていう関係なんだろ?」


 望にそう照れ臭そうに言うと、雄介はその言葉に反応し、望のネームプレートを見上げるのだ。


「ほんなら、今度っからは、先生の事……望って呼んだらええって事か?」

「あ、ああ……まぁ……」


 自分でそう言っておきながらも最終的に、雄介の顔を見ていられなくなってしまった望は、雄介から視線を外してしまう。


 そんな望に雄介はクスリと笑いながら、


「ホンマ、先生って、可愛えのな……あ、先生やなくて、望だったんやっけか」


 雄介はそのままの勢いで半身を起こして、望の体へと抱きつこうとしたのだが、


「……うっ!」

「ほら、まだやっぱ、傷口が痛むんだろ? 無理するんじゃねぇよ」


 そう言いながら、望は半身を起こし掛けていた雄介の体を横にさせるのだ。


「……っ……スマンな……」

「いいって、気にすんなよ。じゃあ、後は明日な。さっきの事、刑事さんに話すんだろ? それまでゆっくり休んでおいた方がいいんだからさ、それに、怪我とか病気とかした時には寝るのが一番! なんだからよ」

「ああ、ほな、おやすみ」

「ああ」


 望は雄介が寝るまでの間、この病室にいて、雄介が寝たのを確認すると、部屋へと戻るのだった。


 部屋に戻ると、もう人の気配はなく、和也のジャンパーがハンガーに掛かっていない所を見ると、和也はもう帰宅したのであろう。


「流石に和也の方も帰ったか」


 電気を点けても、やはりそこには人の気配はない。和也のカバンもないのだから、当然和也はもうここにはいないということだ。


「俺も帰るかな?」


 望の方も白衣を脱ぐと、ハンガーに掛けてあったコートと入れ替える。 そして、机の中に入っている車の鍵を取り出すと、駐車場へと向かうのだ。




 そして翌日。


 警察は雄介の病室へと入ると、望と和也も雄介の病室へと入るのだ。

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