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 そう、雄介が答えると、刑事たちは病室を出て行くのだ。


 そして、その話を初めて聞いた和也は雄介の側へとやって来て、


「え? え!? お前は、本当にそれでいいのか!?」

「ええんやって……。坂本はホンマはいい奴だって、この俺が一番知っとる訳やしな。もし、坂本が俺のこと、本気で殺すつもりやったら、昨日、アイツの家行った時に俺の方に普通は包丁向けるやろ? そうやなくて、アイツは自分の方に包丁を向けて自殺しようとしてたんやからな……それに俺が刺されても無視なんかせんで、救急車とパトカー呼んだのはアイツなんやろ? 俺のこと、本気で殺す気だったら、普通、救急車もパトカーも呼ばへんやろなぁ?」

「あぁ! 確かにっ!!」


 雄介のその言葉に納得したのか、望と和也はほぼ同時に同じ言葉を発し、顔を見合わせる。


「ま、そういう事や。ほなら、今日はもう疲れたし、俺は寝るな」

「ああ、うん……」


 望は雄介にそう返事をすると、今度は和也の方へと向き、


「じゃあ、俺達も行こうか?」

「ああ、そうだな……」


 そして、この件に関しては一件落着するのだった。


 和也と望は部屋へと戻ると、


「しかし、こんな展開になるとは思わなかったぜ」

「……そうだな。まぁ、でも、俺は昨日の時点で知ってたけどな」

「え? そうだったのか!?」

「ああ、そう雄介さ、昨日そう俺に話してたんだけど、ほら、俺は刑事じゃないじゃん……だから、その話は刑事さんに言ってくれって言っておいたんだよ」

「そうだったんだ。ま、恋人も大事なんだけど……親友も大事って事なんだな。な、望……俺達って親友だよな?」

「そうだな……ま、俺からしてみたら、和也は最高のパートナーかな?」

「俺だって、望がいなきゃダメなんだからさ」

「ま、これからもお互い頑張って行こうぜ!」


 望にしては珍しく和也に向かい手を差し伸べると、和也の方も、


「ああ」


 と返事をし、望の手を取るのだ。どうやらこちらも友情を取り戻す事が出来たようだ。


 それからしばらくして、雄介はかなり早いスピードで回復の兆しを見せ、望が回診に向かうと、


「先生……俺、今日は久しぶりに外行きたいんやけどな?」

「ああ、まぁ、それくらいは許可かな? 完全に傷の方は塞がってるからな」


 それを察した和也は雄介の為に車椅子を用意してきて、それをさり気なく望へと渡す。


「ほら、二人だけで外に行って来いよ……後の事は俺がやっといてやるからさ」


 そう言って雄介の体を支えると、車椅子の方へと誘導し、望の背中を優しく叩く和也。


「え? あ、ありがとうな」


 そう和也に向かってお礼を言うと、今度は雄介の方に顔を向き直し、


「んじゃあ、行きますか!」


 望は和也に後の事は任せて、病院内にある中庭へと向かう雄介と望。

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