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ー記憶ー23

 そうして和也に返信すると、望は指を動かして電話帳の中にある『雄介』にカーソルを合わせ、通話ボタンを押す。


 すると、何回かのコール音を聞いた後に流れてきたのは雄介の声ではなく、留守番を知らせるアナウンスだった。


 それを聞いて望はその通話を切ろうとしたが、和也のある言葉を思い出す。


『何が何でも、雄介には望の言葉で伝えろよ! じゃなきゃ、心の中まで伝える事はできねぇからな!』


 そうして和也の言葉を思い出した望は、雄介の留守番電話サービスに伝言を残すのだ。


『暇がある時でいいから……電話待ってる……』


 和也に言われた事は全て望の方でやりきった。だから後はもう雄介からの連絡を待つしかない状態だ。


 とりあえず望の方は和也のおかげで心の中がスッキリしたのか、今まで手がつかなかった料理を始める。


 ふと、望は料理をしながら和也のことを思い出す。


 今回のことについては本当に和也には世話になっているような気がする。


 ただの親友なのにここまでしてくれる人はいるのであろうか。いや、本当の親友だからこそここまでやってくれたのであろう。もう望からしてみたら和也は上部だけの友達ではない。そこまで望の事を気を遣ってくれるからこそ本当の親友という事だ。


 望は料理を作り終えると、再びリビングのテーブルに戻るのだが、雄介からの連絡はまだなかった。


「まだか……まだ、仕事なのかな?」


 望からしてみたら、かなり勇気を出して雄介に連絡したつもりだ。


 だがその本人からは全くもって連絡がなく、大きなため息を吐く望。


 望はとりあえず食事を終えると食器を洗ってお風呂へと入る準備はできたのだが、何度携帯を見てみても雄介からの連絡はない。


 お風呂から上がると望は自分の部屋に行ってベッドの上に横になるのだが、それでも雄介からの連絡はなかったようだ。

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