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ー記憶ー54

 そう言いながら、望は一人でブツブツと独り言を言いながら階下へと向かうのだ。


 いつものようにキッチンの棚の上から薬箱を取り出すと、中から風邪薬だけを手に取り、再び雄介のいる二階へと戻る。


 雄介から体温計を受け取りながら、


「えっと……」


 雄介から貰った体温計で測ると、眉を一つ上げて言う。


「三十八.五度ね……。よくこんなにも熱があるのに動き回る事ができたもんだな!」

「せやから、俺は体力の方には自信があんねんって……」

「今はそんなことは聞いてません!」


 そう嫌味っぽく言う望。


 そして今日の望は雄介に対して怒りっぱなしのようだ。 ただし、それは雄介を心配しての叱り方であることがわかる。


 望は大きなため息をつき、雄介の手首の脈を測る。


「何してんの……」

「黙れっ!」

「あ、ああ……すまん……」


 雄介は望のその気迫に負けてしまい、つい謝ってしまっていた。


「まったく……脈も早いじゃねぇか……次は口を開けろ」

「キスしてくれるんか?」

「今はそれどころじゃねぇんだよっ! まったく! もう! そういうことはいいから今は俺の言うことを聞くんだっ!」


 今日の望はいつもより怖い。そう雄介は思っているのかもしれない。もう望には何も言わない方がいいと思ったのか、望の言うことを聞いて口を開ける雄介。


「ほら、喉までも赤くしてんじゃねぇか。まぁ、とりあえず、ただの風邪で良かったわぁ。それに、体が不調を訴えるって事は体が休みたいって言っているんだからな。とりあえず、お前は自分の体をいじめ過ぎだ」

「せやけどな……」

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