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ー記憶ー56

「ああ、俺もだから安心しろよ」


 病気の時というのは物凄く不安になりがちで、その心理を知っている望は雄介が求めているであろう言葉を返すのだ。


「望の頰……冷たいんやなぁ」

「お前が熱すぎるんだろ? 今、氷枕を持ってきてやるから待ってろよ」


 そう言うと、望はそっと雄介の手を布団の中に入れ、急いで階下へと向かう。


 そして氷枕を手にすると、二階へと戻り、雄介の頭の下へとその氷枕を置くのだ。


「ホンマ……ありがとうな」

「いいって……気にすんなよ。俺は食器とか片付けてくるから、お前はゆっくり休むんだぞ」


 望は優しく雄介の頭を撫でると微笑む。


「ああ」


 雄介はそれで安心することができたのか、そこで瞼を閉じるのだ。


「ほな、おやすみ」

「ああ、おやすみ」


 望は雄介の額にキスをし、雄介から離れて下の階へと行ってしまう。


 望が行ってからは薬が効いてきたのか、雄介はいつのまにか夢の中へと落ちていたようだ。


 望の方は洗い物を終えると、一日の疲れを取るためにお風呂場へと向かい、体を洗うと雄介が待っている部屋の方へと向かう。


 望はいつものように首にタオルを巻いて部屋へと入るのだが、今日の雄介は風邪でダウンしているためか、最近毎日の恒例となっていた雄介に頭を拭いてもらう行為は不可能のようだ。望は仕方なしに自分で頭を拭き始める。

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