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 雄介が店員さんにさっきの火災のことについて説明し終えると、そこに雄介の携帯が震え始める。


「はい!」

『……雄介か? 早く……マズイ……! 早く……来て……』

「へ? 何て!? もう一度……言うて……」


 望からいきなりの電話。そしてそう何もそんなに喋っていないのにも関わらず、その電話は直ぐに切れてしまった。


 そうここはそんなに電波の悪い状態ではない。それなのに望の言葉はこう途切れ途切れでハッキリと聞き取ることができなかった。だが今の様子だとまるで電波が悪い場所にいるようにも思えるほどだ。


 でも雄介の耳には一つだけ残っている言葉がある。


『早く来て……』


 と。


 いったい今の望に何があったのであろうか。


 雄介は直ぐにさっきいたファーストフード店へと向かう。


 だがさっきいた場所なのにも関わらず何故かそこにはそのさっきまであったファーストフード店が見当たらない。


「確か……ここやったよな? さっきまで居た所って……? それに、エスカレーターの近くやし……」


 雄介が首を傾げていると再び焦げ臭い臭いが漂ってくる。


「はぁ!? こっちもやったんかいな? いったい、このデパートの火の管理はどうなってんねん!」


 雄介はそこで独り言を漏らしていると、微かにだが声が聴こえてくるのだ。


「……け……雄……すけ……そこに……はぁ……はぁ……いるのか? ケホッ! ゲホッ!!」

「その声は望かぁ!? ああ、居るよっ! いったい、どうしたっていうんや?」

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