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ー天災ー11

 雄介は耳を澄ませ、聞き耳を立てると、今度はその声がハッキリと聞こえてきた。


「……何処に居るの?」


 雄介はその助けを求める声に優しい声で答えようとする。


 すると、雄介の声が聞こえてきたようで、


「……ココ」


 そう、幼い男の子の声が確かに雄介の耳に届いたが、今いる場所は伝えてくれないようだ。きっとまだ幼いからか、場所や名称などが分からないのかもしれない。とりあえず、自分がいる場所から声を上げることが精一杯なだということだ。


「ココだけじゃ……分かんのやけど?」


 雄介はその子供に話しかけながら、子供のことを探し続ける。


「怖いよー……早くー!」

「おう! 分かっているって!」


 未だに声しか聞こえてこない状況で、雄介は探し続ける。


 大人なら居場所を教えてくれるだろうが、子供はその場所が分からないかもしれない。


 そうこうしているうちに、背中にしょっているボンベの警報音がさっきよりもやや大きくなってきていた。


 とにかく、子供の声まで聞こえてきている中で、自分だけ先に下に降りることはできず、雄介は警報音が鳴っている中でも子供を探し続ける。


 子供部屋の前には『◯◯君の部屋』というプレートまで溶け、その場に落ちていた。


 雄介はその部屋を一応見てみるが、やはりこの部屋にも人の気配はない。


 いや、もしこの部屋に居たとしても、あんな元気な声が出るわけもないだろう。


 そういやよくよく考えてみれば、この火の中ではかなり元気な声だったように思える。


 この火の中にいるのだから、もうちょっと声が掠れていてもおかしくはないはずなのに、そんなに掠れている程の声ではなかったような感じがする。


 それに、そんなに咳き込んでいる様子もなかった。


 だがもうさっきまで聞こえていた声が聞こえなくなってしまったのは気のせいだろうか。

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