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天災ー13

 扉を開けると、まず雄介の視界に入ってきたのはトイレだ。多分、部屋を広くするためにトイレとお風呂場が一緒なのだろう。


 そこに足を踏み入れると、トイレと浴槽の間にはカーテンが引かれていた。


 そのカーテンには「防火カーテン」と書いてある。


 普段、このカーテンはきっと浴槽とトイレとを区切るためのものだろうが、火災の場合には火の手が回らないようにするためのものでもある。


 そこで雄介は声をかけてみた。


「ここにおるんか?」

「……うん」


 微かではあるが、今にも不安で消え入りそうな声に、雄介はそのカーテンを開けてみる。


 すると、カーテンの奥にある浴槽の中でしゃがんでいる子供の姿が見えた。


 そこで安堵の息をつき、


「良かったわぁ、ここにおって……助けに来たで……」

「うん!」


 雄介は優しくその子供に言うと、その子供は消防士の姿を見てやっと安心したのか、雄介に向かい笑顔を向けていた。


 そしてその子供は雄介にしがみついてくる。


「暑かったと思うねんけど……よう頑張ったなぁ」

「うん!」


 そう笑顔で返事する子供に安堵の表情を浮かべると、とりあえずお風呂場を後にする雄介とその子供。


 確かに子供を助けることはできた。だが実はここからが問題なのだ。


 ここからどうやって雄介と子供を助けるか? これが問題である。


 もう空気ボンベの方は一分を切っていた。残り一分でこの子供と一緒に助かることができるのだろうか。

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