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ー天災ー18

 その後、消防隊員は鎮火したのを見届け、後始末を終えると各署へと帰って行く。


 とりあえず署に戻ると、報告書を書き始める雄介。


 確かに坂本のおかげで助かった。子供も雄介も。


 だが、雄介はそれで終わりではない。


 明日、望と会う予定の雄介。


 雄介は非番で望は早くというのか夕方には帰れるということで夕飯を何処かで食べようということになっている。だから、その時に望に言わなければならない事があるからだ。


 そう、今日の朝掲示板で見た『異動』の事をだ。


 その火事の後はデスクでその事について考える。


 報告書だってなかなか進んでいない雄介。


 ペンを持ちながらペンを顎に当て、その事について考え事をしているらしい。


 とりあえず報告書を上の空状態で書き上げると、夕飯の時間らしく食堂へと向かうのだ。その後は色々とあって何も無ければ仮眠を取る事が出来る。


 だが、雄介はその仮眠室のベッドで寝れないでいた。


 望にどう『異動』になった事を話すべきなのだろうか?


 恋人になれて、やっと一緒に住み始めたのに今度は異動となってしまった雄介。せっかくこれからは望と一緒に幸せを手にしようとした矢先にこんな事になった。


 運命と捉えるべきところなのか? 神様のイタズラと捉えるべきか?


 人生においては確かに誰にも試練はあるのだけど、それでも試練が多いのではないかと思う。でも逆に言えば試練があるからこそ人生なのであろう。


 ただただ毎日のように平和に暮らしていくのも悪くはないのだけど、ただそれだけでは楽しくはないのかもしれない。


 そう、試練というのはいい事も悪い事もだ。


 今日あった事だってそうだ。


 悪いこともいい事も試練の一つなのだから今日事はたまたまその両方を経験した。


 しかしあの時自分の勝手で記憶喪失になってしまった望から逃げるようにレスキュー隊の研修に行ってしまった事で運命が変わってしまった。もしレスキュー隊の研修をしていなければ今はまだ消防士としてこの春坂に居て望と一緒に暮らす事が出来たのかもしれない。


 でもその運命を変えたのは確かに雄介だ。だから仕方がないと言えば仕方がない。


 ただ望にその事について話すのが憂鬱なだけだ。

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