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ー天災ー24

 とりあえず今は、望にどう遅れた言い訳をするかを考えるのが先だ。


 そんなことを考えているうちに、エレベーターは最上階へと着いてしまっていた。レストランへと続く扉が開かれる。


 やはりまだ望に会うのは憂鬱な雄介。


 でももうここまで来たら後戻りは出来ない。


 雄介は店員に待ち合わせだということを言い、望のことを探す。そして望のことを見つけると、何もなかったかのように雄介は望に笑顔を見せ、とりあえず遅れたことを頭を下げてまで謝るのだ。


 最初は流石にムッとした表情をしていた望だったのだが、急に雄介が来たことでホッとしたのか、笑顔へと変わる。


「ホンマ、スマン……。待っててくれたんか?」

「ああ、お前が絶対に行く。ってメールしてきたからなぁ」

「ああ、ぅん……まぁ……。とりあえず、スマン……」

「ま、仕方ねぇよ……俺もそうだけど、俺達の場合にはさ、時間通りに終わる仕事っていうのはしてないんだからな」


 その言葉に雄介は一瞬首を傾げたのだが、望がそう思っているのならそれでいいと思ったのであろう。


 だって雄介の場合にはとっくに今日の朝には仕事を終わらせていたのだから。


 もしかしたら前にそんなことを望に言っていたのを記憶喪失のせいで忘れているのかもしれない。それはそれで好都合なことだろう。


「お前だってそうだろ? 人が助けを求めていたら、プライベートのことは二の次だろうしな」

「あ、ああ……まぁな……」


 そう返すものの、今日遅れたのはそんな理由ではない。それとは逆で寧ろプライベートのことを考えていて遅れたのに、そのことを言えずに望にはただただ謝ることしか出来ない雄介。


 望は雄介が来るまで階下に散らばる景色を眺めていたのか、雄介もやっと望の許しを得たようで席へと座って窓の外を眺める。


 先程エレベーターから見た景色とは違う景色が階下に広がっていた。


 確かにエレベーターから見た景色も綺麗だったのだが、流石は展望レストランというだけあるのであろうか。昼間ここに訪れたのなら富士山さえも見えているのかもしれない。だが今の時間は闇が広がる夜だ。東京という街は夜閉まる店も少なく夜中中ずっとネオンで照らされている街なのだから、看板のネオンやライトがたえることはないということだろう。


 人々はこの景色を創るまでに何年いや何十年という月日を掛けて造って来たのであろうか。その何十年前の人々が今のこの景色を見たらどんな反応をするのであろう。そうそれだけこの街は今も変わり続けているのだから。


 星というのは何億光年も掛けて光を地球に届けて来ているのに、人間は人工物な光を短い時間で作って来たのだから。

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