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ー天災ー65

 そこに置かれていた配給のパンは、菓子パンと惣菜パンがある。それが三組置いてあることから、一人一組なのだろう。


 雄介は先に菓子パンを手に取り、口にする。


「あんまり菓子パンって好きじゃないんやけどな……今は美味しく感じるわぁ」


 そう言いながらも、雄介は食べる。


 今は本当に自分が好きな物を好きなだけ食べられないのだから、きっと嫌いな物でも美味しく感じるのであろう。


 一方、和也の方は、


「俺は惣菜パンの方は好きじゃねぇんだよな……だから、雄介、食べてもいいぜ」

「せやなぁ、ホンマは貰って上げたいところやねんけど、今はそういう物も我慢して食べていかないとアカンと思うで。 今は明日を生き抜く為に好き嫌いとかしている場合じゃないしな」

「そっか……だな」


 流石に和也は、雄介が何が言いたいのかが分かったのか、先に惣菜パンの方を口にする。


 二人でしばらく話をしていると、時計の針が二十時を過ぎた頃、望が部屋へと戻って来た。


「あ、おかえりー」

「ああ、おう……。って、和也大丈夫なのか?」

「ああ、まぁな。風邪ぐらいなら一日寝てれば大丈夫だって……」


 そう笑顔で話す和也に安心し、望は雄介の隣に腰を下ろす。


「良かったー。二人とも食べてくれてたみたいでさ。今日の昼間配給があったからさ、それを貰ってきておいたんだよ」

「スマンな」

「ありがとうな……望」

「ああ、まぁ……二人は知らないだろうって思ってたからさ。それに取りに行けたのも俺だけだろうしな」

「ああ、まぁ……せやな」

「な、望……今日は遅かったみたいだけど、大丈夫だったのか?」

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