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ー天災ー124

「だってなぁー、望って人のこと言えへんなぁって思うてな」

「お前だって、あーだこーだ言ったって親父さんのこと好きなんじゃねぇのか?」

「べ、別にそんなつもりで言ったんじゃねぇよ」


 そう言う望なのだが、何故か顔が赤い。


「あーもー! 寝るぞっ! 消灯時間にまっちまうからさ」


 そう言い、一番最初にソファを立ち上がったのは望だ。そして望はそのままベッドへと向かい、横になった。


 そのほぼ同時に、消灯時間になってしまった。部屋の明かりが消えると、三人は未だにソファに座っており、暗闇の中でベッドのある寝室までどうやって行くか悩んでいた。


 とりあえず、この部屋の構造をよく知っているのは和也だ。


 和也を先頭に、裕実がその後ろに、そして雄介がその後ろに、それぞれ腰を掴んで歩み始める。


 しかし、本当に周りが見えないほどの暗闇。部屋の構造が分かっている和也でも、寝室の場所が曖昧であることに気づいた。そこで和也はある案を思いついたようだ。


「な、望?」


 和也が声をかける。


 すると、面倒くさそうな様子で望が返事をした。


「なんだよー! うるせぇなー」

「よっし! あっちの方だなっ!」


 これが和也のアイデアだ。今は暗闇で目は見えないが、耳は聞こえる。だから、望に声をかけて、望が返事をした方向が寝室だということだ。


 しかし、望もバカではない。和也の作戦に気づいたのか、次の声が来るのを待っている間、返事をしないようにした。しかし、和也の声が全くしない。


 逆に、望がベッドで待っているのみだ。


 それが不思議なほど人の気配もない。三人がいるはずなのに、足音すら聞こえてこない。望はベッドに戻ってから五分、十分と経つが、和也たちの姿が見えない。


 暗闇の中で歩き回るのは危険だ。


 望は仕方なく、ベッドの近くにある懐中電灯を手に取り、三人を探し始める。


 先ずは寝室を出て、四人がいつも集まっているソファへと光を向けるが、三人の姿は見当たらない。


 一体、三人はどこに行ってしまったのだろうか?


 望は確認のためにドアを開けて、懐中電灯を照らすが、廊下にも三人の姿は見当たらない。


 携帯があれば、連絡を取ることができるだろうが、携帯はベッドに置いてある。


 望は仕方なく、三人を探すのを諦め、部屋に戻ってくる。


 さっき、望が意地悪なことをしなければよかったと後悔しても、遅いだろう。


 望は懐中電灯で周囲を照らしながら、ベッドに戻る。


 すると、さっきとは違い、ベッドには何か温かみのある感じがして、望は安心したようだ。


「なんだ……戻って来てたのか……」

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