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ー天災ー126

 雄介が来てから十日ほどが経ったある晩。


 みんなでソファに座って話をしていた。


 望の隣にはいつものように雄介が座り、和也の隣には裕実がいた。突然、真剣な表情を浮かべて雄介が望に視線を向ける。


「あのな……望……?」


 突然の質問に、望は目をキョトンとさせるのだ。


「……へ? あ、あー、へ? あ、えーと……なんだ?」


 真剣な眼差しに、望は何となく理由を察したのか、雄介から視線をそらす。


「屋上に行こか? 今日は望と二人で話がしたいんや」

「え? あー、そうだな……」


 望は答えながらも、和也が何かをニヤリとしているのに気づく。雄介の真剣な誘いに、もしかしたら雄介が帰ってしまうかもしれないと思い、望は一瞬ためらった。


 しかし、和也の表情を見て、望は急に否定した。


「あー、別にいいや」

「ん? どっちの意味やねん……」

「あー、別に行かないってこと……」


 確かに望は、雄介と二人でいる時はだいぶ素直になってきたつもりだが、他の人たちがいるとなかなか素直になれない。


「せっかくなんだから、二人で話しに行ったら、どうだ? お前らにはもうあまり時間がないんだしさ」


 和也がそう言うと、裕実も乗っかってくる。


「好きな人が遠くに行ってしまうと思ったら、やっぱり、二人だけの時間を大切にしたいって思いますもん……」


 そう言って裕実は望の背中を押し、和也達は雄介と望を部屋から追い出す。


 裕実に追い出された雄介と望。


 雄介も裕実に追い出されるとは思っていなかったらしく、部屋を出ると息を吐いた。


「ま、追い出されてもうたし、とりあえず、屋上行こ……」


 雄介はそう言うと、望の背中を押して屋上に向かった。


 その途中、望が口にするのだ。


「あ、あのさ……雄介は、その……もう、帰るんだろ?」

「え? あ、まぁ……そういうことやけどなぁ」

「別に部屋を出る必要はなかったんじゃねぇのか?」


 その言葉に、雄介は少し考え込む。そして、真剣な顔で望を見つめ、


「今の俺は……ホンマに望と二人でいたい気分やねん……せやから、付きおうてくれへんか?」


 その言葉に、望は一瞬戸惑ったが、顔を赤らめて雄介から目をそらす。

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