「だってさぁ。それだったら、良かったんじゃねぇのか？　さっき、そういえば、雄介のこと心配してなかったか？　なんて言ってたっけ？　『お前には近くに恋人がいるんだからさ、直ぐに会えていいよな』みたいな事言ってただろ？　それだったら、雄介が会いに来てくれて良かったんじゃねぇのか？」

「……え？　あ、まぁ」

　確かにさっきは和也の前であんなこと言ったのだが、こう本人を前にすると恥ずかしいらしい。

　すると望は話を変えるためなのか、それとも本気で言ってるのか？

「……で、雄介は診察室に来たって訳だけど、って事は診察に来たのか？」

　そう望の場合には仕事中は超が付く程の真面目な性格だからなのか、そう素で雄介に聞いてみたらしい。

「あんな、そんな訳ないやんか……だって、予約さえも入れてなかったんやで、それに、怪我しておったら、近くの病院の方に行くだろうしな。ただ単に今望に会いに来たって事や」

　そう笑顔で雄介は言うのだが、

「ふざけんなっ！　なんでもないんなら、ここに入って来るんじゃねぇよ！　ここは遊ぶ所じゃねぇんだからな！　俺と話がしたいんだったら、終わってからにしろっ！」

　そう声を荒らげてまで言ってしまった望。

「確かに望が言いたい事は分かるけどな……何もそこまで言わなくてもいいんじゃねぇのか？　せっかく、雄介は時間まで割いて望に逢いに来てるんだからさ」

「流石の俺だって、怒るに決まってるだろ。ここは病気になった人が体を治しに来る所なんだ。何でもない奴がここに来てんじゃねぇよ」

　今日の望は機嫌が悪いのか和也がいくら雄介の肩を持って上げても受け入れてくれなさそうだ。

「そやな……確かに、俺が悪かったし、ほな、またな……」

　雄介は望にそこまで怒られるとは思っていなかったのか、そのまま診察室を後にする。

　雄介が出て行った後に、

「何もあそこまで言わなくても良かったんじゃねぇのか？」

「だって、お前だって言ってただろ？　仕事は仕事なんだからさ。それで、プライベートはプライベートだろ？」

「ま、そうなんだけどよ」