望は食べながらそう答える。
「いただきまーす」
和也の方はご飯を食べ始めると、こう幸せそうな顔をして食べる方だ。きっとご飯が好きなのであろう。それに望達は震災を経験しているのだから余計なのかもしれない。あの時は普段は自由に食べられていた食べ物が自由に食べる事が出来なかった。だが今はやっと自由に食べ物を食べれるようになってきたのだから余計にこのご飯の時が幸せに感じるのかもしれない。
望の方もその震災が起きる前は少食で残すという事があったのだが今は残さずに食べるようにはなってきていた。
そして今の二人にとってこの時間は一時の休み時間。だからこそ自由な時間であって、どんな話をしても構わない時間でもある。そして二人には今はそれぞれの恋人がいるからこそ、その話で盛り上がるのであろう。
だが望の方はそういう話はしたがらない。和也の方もそんな望を知っているのだから、あまり深い話まではしていなかった。
「な、望……まだ、学会の資料まとめる仕事は終わらないのか?」
「まだ、終わる訳ねぇだろー。ま、昨日のうちに大分進ませておいたから、後少しで終わるかな?」
「そっか……ホント、望は今は大変なんだな」
「ん? 大した事ねぇって……それに、あ、いや……なんでもねぇ……」
今、望は和也に何か伝えようとしたのだが途中で止めてしまう。
そんな望に和也は首を傾げていた。
和也は心の中で「ま、いーや……」と思うと残っている食べ物を口にする。
望はもう食べ終えたのか、
「じゃあ、また、後でな……」