壁の後ろの方でその会話を聞いていた和也の方は頭を抱えていた。
「あ! そっか……じゃあ、俺は部屋の方に戻ってるな……」
望はそう言うと屋上を後にして部屋の方へと戻って行く。それと同時に和也は壁の後ろから出てきた。
「あのなぁ、望にはあまり俺達が会う事を言って欲しくねぇんだけど……」
「あ! 和也さん! そんな所に居たんですか? 僕だってびっくりしましたよー、だって、ここに来たら和也さんじゃなくて吉良先生がいたんですから……」
「望はな……昼休みにはここに来て雄介とメールしてんの……」
そう答えると和也はベンチへと腰を下ろす。
「そうだったんですか!? っていうか、和也さんが僕をここに呼んだんじゃなかったんでしたっけ? それに、僕は吉良先生がここにいるって事知りませんでしたしね」
そう言いながら裕実も和也の横へと腰を下ろす。
「……!? あ、まぁ……そうなんだけどさ……」
確かに裕実が言っている事は正しい。悔しいがその裕実の言葉に言い返す言葉が見つからなかった。
とりあえず裕実のおかげで望は部屋に戻ったという事だ。
そしてある意味初めて二人きりになれた裕実と和也。しかも好条件な事に屋上には誰もいない。
今まで本当に二人だけというのは和也が告白してからはなかったようにも思える。そうだお互い仕事も別々に行動をしているし休みの日だって違う。それに望にも遠慮していた所もあって、なかなか、二人きりになれなかった事を思い出す。
だからなのか変に意識してしまっている和也。
今の今まで普通に裕実を会話していた筈だったのに急に言葉が出なくなってしまっていた。その代わりに聞こえてくるのは胸の鼓動だ。
言葉がなくなった代わりに和也は今度行動へと移すと裕実の体を抱き締める。