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ー空間ー44

「ゴメン……俺のせいで楽しくない思いさせちまってるみたいでさ、さっき、ちゃんと裕実に意見を聞いておけば良かったぜ」


 そんな和也に裕実は目をパチクリとさせていると和也が言いたい事が分かったのか今度は裕実の方が視線を反らし、


「あー、和也さん……その、謝られても困るんですけど、きっと、和也さんの勘違いだと思いますのでね」


 和也にそこまでされるとは思ってなかったのか裕実はボソリと今までお肉を食べなかった理由を話し始める。


 そうその事は女性だったら可愛い理由でおさまるのかもしれないのだが男性がそれを口にするのは恥ずかしいから裕実は黙っていた。だがこのままでは和也に勘違いされそうだからという事で話す決意をしたのであろう。


「だから、ですね……」


 だが、その事を言おうとしても意外になかなか口に出来ないもんだ。顔を俯けていた裕実だったのだが、いきなり顔を上げ、


「あー、もー! 分かりました! 言いますよ! だって、このまま和也さんに誤解されたくないですもん」


 裕実は意を決したのであろう。今度は和也の方に体を向けると恥ずかしそうに瞳を閉じて、


「実は、僕……猫舌なんです!」

「……へ?」


 今まで顔を俯けて申し訳無さそうにしていた和也だったのだが今の言葉で裏声を上げる。


 そして軽く息を吐くと、


「なーんだ……そんな事だったのか……なんか逆に安心したよ。だってさ、俺の方は本当に一方的に焼肉屋にしたから、裕実本当は嫌いなんじゃないかと思ってたからさ……うん、分かった。じゃあ、無理して食べるんじゃねぇぞ……ゆっくりでいいから食べていこうぜ」


 和也はそう言うともう一度、箸を取って裕実の方の小皿にも肉を入れて行くと自分の方は熱いうちに口の中へと放り込んでいくのだ。

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