いよいよ恋人として、そういうところに向かうんだと思った途端に裕実の顔が強張っているようだ。
きっと裕実は心の中は不安でいっぱいなんであろう。
今の時間は二十時。大人からしてみたら、これからの時間が自由時間みないなものだ。
「裕実、大丈夫か?」
そう体を強張らせている裕実に気付いたのか和也は優しく声を掛ける。
「あ、ああ……はい! 大丈夫ですよっ!」
やはり完全に裕実の方は緊張しているのであろう。完全に声が震えてしまっているのだから。
「じゃあ、行くかっ! やっぱり、今日は二人だけだから緊張とかってしてるよな?」
「あ、いや……別に緊張なんかしてませんよ」
多分、裕実の中では緊張度マックスなのかもしれない。さっきまで元気が良かった筈なのに誰がどう見ても体を固まらせているからだ。
裕実はとりあえず深呼吸をしてみるのだが、やはり、まったくもって緊張がおさまる気配はない。
「裕実! 本当に大丈夫か?」
「あ、ああ……はい! 大丈夫ですからね」
「食い過ぎたとか?」
「まぁ、そこのことろは少しは……」
「じゃあ、やっぱり、もう少し落ち着いたら出るか?」
「だ、大丈夫ですってばー」
そう和也の方に笑顔を向ける裕実なのだが、まだまだ緊張は消えてないのか強張ってしまっている。
「そっか……じゃあ、よしっ! 行くぞ!」
「は、は、はい!」